1950年7月にヨーロッパ諸国間における多角的な資金決済機構として発足したヨーロッパ支払同盟European Payment Union(EPU)を改組して,58年に発足した地域的通貨協定。EMAと呼ぶことも多い。EPUは,加盟国相互間の債権債務を相殺し合い,差引残高を金またはドルで決済する仕組みで,その目的は各国間取引の決済通貨を節約することによって貿易を拡大することにあった。
58年12月29日,西ヨーロッパ主要通貨のドルに対する交換性回復が実施されると同時にEPUは機能を停止し,EMAが発足した。すでに1955年8月,EPU加盟国通貨の過半が交換性を回復した際には,EMAに移行する旨の合意が成立していた。最終段階でのEPUは,加盟国間の債権債務が毎月末集中的に決済され,差引残高のうち75%をドルで決済し,25%はEPUが債務国に対し信用供与を行う仕組みであった。これに対しEMAでは,集中決済を行う機能と信用供与を行う機能とが分離され,前者を扱う多角的決済機構Multilateral System for Settlementと後者を扱うヨーロッパ基金European Fundの二つの組織から成る。業務はEPUと同様,BIS(国際決済銀行)が行った。ヨーロッパ基金(総額6億ドル)は加盟国から借入申込みを受けると個々に審査のうえ信用供与を行うこととされ,EPUの場合自動的に信用供与されていたのとは異なる。多角的決済機構は利用されることがきわめて少なく,各国間の債権債務のほとんどすべてが為替市場を通じて決済された。その後,各国為替市場の発達,ヨーロッパ通貨同盟EMU(〈ヨーロッパ通貨制度〉の項参照)の発足などからEMAは存在理由が薄れ,1972年末廃止された。
執筆者:武田 哲夫
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略称EMA。1955年ヨーロッパ決済同盟(EPU)加盟18か国の調印によって、ヨーロッパ基金と多角的決済機構の設立を決めた通貨協定。この協定は、EPU加盟国の通貨が交換性を回復した場合にEPUにかわるものとされていたが、58年末に西欧14か国通貨がこの条件を満たしEPUは発展的に解消したので、ただちに発効した。ヨーロッパ基金の融資はEPUのように自動的ではなく申請に基づいて供与され、多角的決済機構はEPUとほぼ同じで、業務は国際決済銀行(BIS)が代行した。この協定は61年に経済協力開発機構(OECD)の管理下に置かれ、72年12月に廃止された。
[土屋六郎]
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