日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラオ」の意味・わかりやすい解説
ラオ
らお
Lao
タイ北部からラオスにかけて分布するタイ系の民族。ラオの言語ラオ語はタイ語族に属し、先史時代にはタイ人と共通する起源をもっていたと考えられている。もともとアッサムから中国南部にかけての地域に住んでいたのが、やがて今日のタイ人の祖先はチャオプラヤー川流域へと移動し、しだいにマレー半島へと南下した。一方、ラオ人の祖先はメコン川およびその支流の流域に移動し定着した。メコン川西岸のラオ人の多くは、タイ人の支配を受けるようになった。ラオの人口は、ラオスで約200万人であるが、タイに住む者のほうが多い。ラオは水田や焼畑で稲をつくり、米は蒸して食べる。米以外の穀物や、野菜、果樹の栽培を行い、豚、ニワトリ、アヒル、水牛、牛などを飼う。稲は5~10月の雨期に植え、11月の乾期の初めに収穫する。乾期には狩猟、漁労を行ったり、杭上(こうじょう)家屋を新築、修理したり、交易を行ったり、仏教の祭礼を行ったりする。ラオ人の大多数は仏教徒で、若者は少なくとも3か月間僧の修行を積むことが望ましいとされている。仏教と同時にピイとよばれるさまざまな形態の精霊の存在を信じ、それぞれのピイに対してふさわしい儀礼を行う。たとえば、土地のピイを祀(まつ)って鎮める場合には、動物の供犠(くぎ)を含む年中行事を行う。ラオにとっては、精霊の存在を信ずることと仏教の信仰とは矛盾しないのである。
[清水 純]