改訂新版 世界大百科事典 「ラティガン」の意味・わかりやすい解説
ラティガン
Terence Mervyn Rattigan
生没年:1911-71
イギリスの劇作家。オックスフォード大学に学び,外交官を志したが,劇作を仕事とするに至った。みずから〈エドナ叔母さん〉と名づけた素朴で平均的な観客を念頭におき,深みには欠けるが巧みな構成と情感に訴えるせりふとをもったわかりやすいウェルメード・プレーを量産した。作品には《フランス語入門》(1936初演。以下初演年),《シルビアとはだれか》(1950),《眠れる王子》(1953)などの軽い喜劇,《ウィンズロー家の少年》(1946),《ブラウニング版》(1948),《深く青い海》(1952),《別々のテーブル》(1954)など,いくらか深刻な題材を扱ったメロドラマのほか,アラビアのロレンスを主人公にした《ロス》(1960)のように意欲的なものもある。芸術的評価は必ずしも高くなかったが,観客に受ける役を含むため多くの名優をひきつけ,興行的にはおおむね成功した。自作の脚色を含む映画シナリオ多数がある。1971年サーの称号を与えられた。
執筆者:喜志 哲雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報