翻訳|rubidium
周期表第Ⅰ族に属するアルカリ金属元素の一つ。1861年R.W.E.ブンゼンとG.R.キルヒホフが,鱗雲母から抽出したアルカリ金属塩化白金酸塩中に発光スペクトルによって発見,このスペクトル輝線が暗赤色であったので,ラテン語rubidus(赤色の)にちなんで命名された。単体は塩の溶融電解でブンゼンがはじめて単離した。他のアルカリ金属に随伴してきわめて少量ながら広く産出する。鱗雲母中に比較的多く含まれ,鉱泉水中に見いだされることもある。植物灰中にカリウムに随伴して微量含まれる。
銀白色の軟らかい金属。体心立方格子。格子定数a=5.610Å(-196℃)。比熱0.0711cal/K・g。融解熱6.1cal/g。比抵抗1.2×10⁻6Ωcm(0℃)。高純度のルビジウム塩は紅紫色の炎色を示す。陽性のきわめて強い元素で,単体の反応性はセシウムに次ぐ。気体は青色。常温の空気中でただちに酸化されて酸化物Rb2Oとなり,過剰の酸素との反応で超酸化物RbO2を生ずる。ハロゲンとは直接反応する。水と激しく反応し,水素を発生して水酸化物RbOHになる。酸,エチルアルコールとは水素を発生して,対応する塩またはエトキシドを与える。液体アンモニアに溶けて溶媒和電子eの青色となるが,時間とともにアミドRbNH2に変わる。水銀とアマルガムをつくる。電気陰性度0.8。酸化電位E°=2.99V(Rb(金属)─→Rb⁺(水)+e⁻)。空気との接触を避けて石油,パラフィン油中に保存する。
二クロム酸ルビジウムRb2Cr2O7のジルコニウムによる真空加熱還元およびアジ化ルビジウムRbN3の真空加熱による。工業的には鱗雲母からのリチウム製造時の副産物として取り出され,塩化物を金属カルシウムなどで750℃で減圧還元して得られる。光電池の原料とされる。87Rbは岩石の年代決定に利用される。
執筆者:藤本 昌利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
Rb.原子番号37の元素.電子配置1s22s22p63s23p63d104s24p65s1の周期表1族アルカリ金属元素.原子量85.47.1種類の安定同位体と14種類の放射性同位体がある.天然には,非放射性の85Rb(72.165%)と放射性の87Rb(27.835%)が存在する.1861年R.W.E. Bunsen(ブンゼン)とG.R. Kirchhoffが分光分析により発見した.
天然には,紅雲母(リチア雲母,鱗雲母)などの鉱石や鉱泉中に少量見いだされる.地殻中の存在度32 ppm.金属は塩化ルビジウムを真空中でカルシウムと熱し,還元すると得られる.銀白色の軟らかい金属.体心立方格子構造.格子定数a = 0.562 nm.金属結合半径2.47 Å.密度1.53 g cm-3(20 ℃).融点38.89 ℃,沸点688 ℃.第一イオン化エネルギー4.176 eV.炎色反応は紅紫色で,元素名は,その色を示すラテン語rubidusに由来する.化学的性質はカルシウムに似ているが,より活性が高い.空気中でただちに酸化されて表面がくもるが,高温では超酸化物RbO2を生じる.水素,ハロゲンと直接化合する.水とはげしく反応して水素と水酸化物を生じる.水銀とアマルガムをつくり,ほかのアルカリ金属とは固溶体をつくる.化合物中ではつねに酸化数1の陽イオンとして存在する.塩はカリウム塩と同形で,水に対する溶解性も類似している.
真空管のゲッターや光電池に用いられる.また,87Rbはβ崩壊して87Srになるが,その半減期が4.8×1010 y と長いので,107 y よりも古い岩石の年代測定に利用される(ルビジウム-ストロンチウム年代測定法).ルビジウム塩はガラスや陶磁器の製造原料に用いられる.[CAS 7440-17-7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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