改訂新版 世界大百科事典 「ルリビタキ」の意味・わかりやすい解説
ルリビタキ (瑠璃鶲)
Siberian bluechat
Tarsiger cyanurus
スズメ目ヒタキ科の鳥。全長約15cm。雄は背面が青く,下面は汚白色,脇に橙黄色の羽毛がある。雌は背面が緑褐色で,下面は汚白色,脇は橙黄色をしており,腰部から尾にかけては青い。雄の若鳥は雌と同様の羽色をしている。アジア大陸東部で繁殖し,秋・冬季には東南アジア,マレー諸島などに渡る。日本では,九州を除いた地域のおもに亜高山帯の針葉樹林で繁殖し,秋・冬季には低地の薄暗い林に移動する。地表付近で昆虫をとって食べることが多いが,秋・冬季には植物の種子も好んで食べる。繁殖期には,雄は森林の小枝でヒョロロヒョロロと聞こえる美しい声でさえずる。さえずり以外では,ヒッヒッククッククッという声で鳴くことが多い。林内の倒木のかげや崖のくぼみなどにコケや枯葉でわん形の巣をつくる。1腹の卵数は3~6個。雌が抱卵し,雌雄で育雛(いくすう)する。秋・冬季には,雌雄が1羽ずつ別々になわばりをかまえて生活し,群れになることはない。このなわばり形成と関連して,秋のはじめにもさえずりがしばしば聞かれる。
執筆者:樋口 広芳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報