ロレーヌ(その他表記)Lorraine

翻訳|Lorraine

デジタル大辞泉 「ロレーヌ」の意味・読み・例文・類語

ロレーヌ(Lorraine)

フランスグラン‐エスト地方中部の地域。鉄の産地で工業が発達。北東のモーゼル県アルザスとともに長年ドイツとの係争地地方政府メスにある。ドイツ語名ロートリンゲン。→アルザス‐ロレーヌ

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精選版 日本国語大辞典 「ロレーヌ」の意味・読み・例文・類語

ロレーヌ

  1. ( Lorraine ) フランス北東部の地方名。豊富な地下資源鉄鉱石など)と水運の利便さにより、重工業が発達。

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改訂新版 世界大百科事典 「ロレーヌ」の意味・わかりやすい解説

ロレーヌ
Lorraine

フランス北東部,ムルト・エ・モーゼル県,ムーズ県,モーゼル県,ボージュ県にまたがる地域régionで,ドイツ名はロートリンゲンLothringen。面積2万3540km2,人口233万(2005)。

東端にあるボージュ山地を除くと,地質的にはパリ盆地沖積層に続くロレーヌ台地が大部分を占め,モーゼル川ムーズ川沿岸には砂岩質,泥灰岩質,粘土質の地層が交互する。ロレーヌはパリから東へメッス,ザールブリュッケンを経てフランクフルトへ向かう東西軸と,ローヌ川,ソーヌ川,モーゼル川の南北軸が交差する重要な地点にある。メッスを中心とするロレーヌ北部はローマの影響を受け,一方,ナンシーを中心とするロレーヌ南部はボージュ山地で隔てられたアルザスとの結びつきが強い。

 海から離れているため,ロレーヌの気候は厳しく,内陸的特徴を示している。1月の平均気温は1℃ないし2℃で,年間氷結期間は80日である。夏は比較的暑く,7月の平均気温は18℃である。降水量は年により変動するが,600mmから800mmで,年間を通じて降り,乾季はない。

ロレーヌの名は,ベルダン条約(843)によりこの地がロタリンギアに属したことに由来する。855年,ロタリンギア王国領となり,当初はアルザスとフリースラントを含んでいたが,後者はルートウィヒ2世と,西フランクの王シャルル(禿頭王)に与えられ,ロレーヌから分離した。945年にロレーヌは,ロレーヌ高地ロレーヌ低地の二つに分割された。ロレーヌ低地は13世紀にブラバント公爵が所有したため,そのころからブラバント地方と呼ばれるようになった。1429年ブルゴーニュのフィリップ善良王の所轄下に入り,現在はベルギーの一部,ブラバント北部,オランダのゲルダーラントに相当する。ロレーヌ高地は1736年まで公爵領であったが,ポーランド王スタニスワフ1世に譲渡され,さらに66年,彼の死後フランスに与えられ,四つの県に分割された。1871年普仏戦争に敗れたフランスは,ロレーヌ北部をドイツに割譲したが,第1次大戦後,ベルサイユ条約によって返還された。その歴史的経過からロレーヌは,今日でもモーゼル県の北部がゲルマン語圏に属するなど,文化的な二元性を残している。

人口密度は1km2当り98人で,国の平均106人を少し上回る。しかし,最近の人口増加は緩慢で,国平均増加率を下回っている。その原因は,出生率の一般的低下と,ロレーヌの発展を支えていた工業部門の不振である。しかし,ロレーヌ全体の人口密度の数値はあまり意味がない。というのは,県ごとの人口密度の差が大きいからである(ムルト・エ・モーゼル県137人,モーゼル県163人に対し,ボージュ県66人,ムーズ県31人)。

 ロレーヌの都市化・工業化地域は,モーゼル川に沿って主要な軸を形成し,南のナンシーからメッスを経てティオンビルに至る約100kmに,ロレーヌの人口の約半分が集中し,事実上の行政的中心地メッスと歴史的都市ナンシーという二つのアグロメレーション(人口集積地域)が相対している。周辺地域(ムーズ県,ボージュ県,ムルト・エ・モーゼル県の南部,ロレーヌ台地)の大部分は依然として農村地域である。ここでの唯一のアグロメレーションはエピナルである。

 ムルト・エ・モーゼル県とモーゼル県の人口密度が高いのは,工業力によるものである。ロレーヌはフランス第1,さらにはEC第1の鉄鉱産地であった。しかし,今日では鉄鋼生産量では第1であっても,ブリエー,ロンウィー,ティオンビル地区の鉄鉱石は,採掘は容易だが品位が低いため,より高品位の海外の鉄鉱石との競合にさらされている。しかも,製鉄業は輸出入に便利な海岸部に移動し,ロレーヌの工場は閉鎖されつつあり,雇用の機会も減少している。また東部のフォルバック周辺のロレーヌはフランスの主要な炭田地帯であるが,生産量は後退し,雇用も減少している。塩の採掘はドンバール・シュル・ムルト周辺に集中している。1870年以後,ボージュの谷に後退した織物業も,工場の閉鎖が相次いでいる。

 機械工業(自動車)と電気機械工業の発展とともに,産業の再転換が一部,また局地的に着手されている。エネルギー産業のための基礎設備が増加し,メッス付近には石油精製工場,モーゼルの谷には巨大な火力発電所が建設されている。ロレーヌ北部を通過する東部高速道路の完成とともに,輸送力が改善され,モーゼル川もヨーロッパ統一ゲージで運河化された。とはいえ,産業の再転換に基づくロレーヌ経済の再建は容易ではなく,人口の流出,モーゼル県人によるドイツのザール地方への越境労働にみられるように,雇用問題は今なお深刻である。

 農村地域からの人口の流出も深刻になっている。牛乳生産を目ざす牧畜が農家の主要な収入源となり,かつて主要作物であった小麦は,家畜の飼料用の大麦に取って代わられつつある。ブドウ園も果樹栽培(例えばスモモ)も,トゥルの周辺を除いてもはやあまり重要ではない。森林はロレーヌ全面積の3分の1以上を占め,ボージュ山地では,かつて樹脂が生産されていたが,今日では観光に活路を見いだしている。ボージュ県では,ビッテルを中心に温泉が利用されている。これら観光業の進展はロレーヌ地域自然公園整備に負うところが大きい。

 EUの中心部に位置し,鉄道,道路,水路という交通の要衝を占めるロレーヌは,鉄鋼の生産,製鉄といった工業の主柱の不振にもかかわらず,産業の再転換によって,モーゼル川沿岸地域はその優位性を強めるとともに,都市化・工業化を推進している。

 アルザスと違って,フランス文化の影響を受けやすかったロレーヌには,独特の料理はそう多くはなく,豚肉の料理やマドレーヌといった菓子類が知られている程度である。アルザスほど工業化の進んでいないロレーヌでは,川の水も比較的清澄であり,淡水魚の料理には見るべきものがある。また各種の果物を使ったタルト料理やジャム類が美味である。ナンシーのスタニスラス広場周辺の美しい建物や,地方政府宮殿東側に広がるペピニエール公園などに,かつてのロレーヌの繁栄を思い起こさせるものが残っている。
アルザス・ロレーヌ問題
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百科事典マイペディア 「ロレーヌ」の意味・わかりやすい解説

ロレーヌ

フランス北東部,ドイツとの国境にある地方。ドイツ名ロートリンゲンLothringen。現在はムーズ,ムルト・エ・モーゼル,モーゼル,ボージュの各県にまたがる地域をさす。ボージュ山地とムーズ川の間に高原状の平地をなし,ブリエーを中心とする鉄鉱(ミネット鉱),フォルバクの石炭,ナンシー東部の岩塩などが豊富。ナンシーメッスなどを中心に有数の工業地帯。酪農,穀物栽培も盛ん。ロレーヌの名は9世紀のロタリンギア王国にちなむ。11世紀にロレーヌ公国として樹立された。その後神聖ローマ帝国下で独立性を保っていたが,1766年フランスに併合,1871年普仏戦争によりアルザスとともにドイツに割譲,1919年ベルサイユ条約でフランスに帰属。モーゼル県を除く三県ではフランス語が話されている。モーゼル県でも最近はドイツ語使用者は減少。
→関連項目フランスモーゼル[川]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロレーヌ」の意味・わかりやすい解説

ロレーヌ
Lorraine

ドイツ語ではロートリンゲン Lothringen。フランス北東部の地方,また地方行政区の地域 (レジオン) 。ボージュ,ムルトエモーゼル,モーゼル,ムーズの4県から成る。中心都市はナンシー。パリ盆地の東部からボージュ山脈の西斜面まで広がる高原地帯で,ルクセンブルクとブルゴーニュ,ドイツとフランスの間の十字路にあたり,古くからしばしば領有が変った。 13世紀末から次第にフランス王の勢力が浸透し,それまでのドイツ皇帝の支配を脱して,1766年にはフランス領。普仏戦争後 (1871) から第1次世界大戦後 (1919) までは,一部 (現モーゼル県域) がアルザス地方とともにドイツ領となり,また第2次世界大戦中 1940~44年には全域がドイツの占領下にあった。豊富な鉄鉱石と石炭によりフランスの主要な重工業地域をなし,特に 60年代から重要な経済圏として発達。ロレーヌ地方からルクセンブルクにかけてミネット型鉄鉱床が発達し,魚卵状または土状の褐鉄鉱が特徴である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロレーヌ」の意味・わかりやすい解説

ロレーヌ
ろれーぬ
Lorraine

フランス北東部の地方、旧州名。ドイツ語名ロートリンゲンLothringen。パリ盆地外縁部の台地で、東のボージュ山脈を境にアルザスと接し、北西はアルデンヌ高原に続く。ミューズ川とモーゼル川が北流する。現在も行政地域名として用いられ、ミューズ、ムルト・エ・モーゼル、モーゼル、ボージュの4県に相当。面積2万3547平方キロメートル、人口231万0376(1999)。

[大嶽幸彦]

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デジタル大辞泉プラス 「ロレーヌ」の解説

ロレーヌ

《Lorraine》フランス海軍の戦艦。ブルターニュ級の3番艦。1913年進水、1916年就役の超弩級戦艦。第二次世界大戦中、イギリス海軍による武装解除ののち、自由フランス海軍所属となり、ノルマンディー上陸作戦にも参加。1954年退役。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ロレーヌ」の解説

ロレーヌ

アルザス・ロレーヌ

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旺文社世界史事典 三訂版 「ロレーヌ」の解説

ロレーヌ

アルザス・ロレーヌ

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世界大百科事典(旧版)内のロレーヌの言及

【アルザス・ロレーヌ問題】より

…アルザスAlsaceとロレーヌLorraineはフランス北東部の地方である。1870‐71年の普仏戦争の結果,フランスはベルフォール管区を除くアルザスとロレーヌ北部をドイツに割譲した。…

【アルザス・ロレーヌ問題】より

…アルザスAlsaceとロレーヌLorraineはフランス北東部の地方である。1870‐71年の普仏戦争の結果,フランスはベルフォール管区を除くアルザスとロレーヌ北部をドイツに割譲した。…

【メルセン条約】より

…この分割線は,ドイツとフランスとの言語境界線には沿うものの,政治・教会上の諸関係は顧慮されなかったため,879年には再画定を余儀なくされるなど暫定的要素を有したが,歴史的にはドイツ,フランス,イタリア3国国境の原型を創出した。なおロートリンゲン(ロレーヌ)の領有問題は,近・現代に至るまでドイツ,フランス間の政治課題として残った。【日置 雅子】。…

※「ロレーヌ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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