改訂新版 世界大百科事典 「ローラン」の意味・わかりやすい解説
ローラン
Auguste Laurent
生没年:1807-53
フランスの化学者。1830年パリの鉱山学校卒業後,J.B.A.デュマのもとで実験助手となったのをきっかけに,有機化学の研究に入る。37年に博士号を取得したが,師のデュマと仲たがいする。翌年ボルドー大学化学教授に任命され,45年にはアカデミー・デ・シアンス通信会員に選ばれたが,実験研究上の不利に耐えかねて,パリに戻る。しかし,期待したコレージュ・ド・フランスのポストを得られず,失意のうちに病死した。有機分析にすぐれ,デュマとの共同研究でアントラセンを発見(1832)したほか,多くの新物質を発見した。また師の〈置換理論〉に基づいて〈基本・誘導ラジカル〉の理論を出した(1835-37)。このラジカルを後に〈核〉と呼ぶようになるが,彼によるとまず炭化水素からなる基本ラジカル(核)が存在し,これから置換反応によって同じ骨格をもつ誘導ラジカルが派生する。そしてすべての有機化合物は,この基本・誘導ラジカルを基として,付加反応により生ずる一連の系列(族)に分類できると考えた。このほか,結晶学からの類推から,有機化合物の構造に迫ろうともした。
執筆者:吉田 晃
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報