ワンタン(読み)わんたん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワンタン」の意味・わかりやすい解説

ワンタン
わんたん / 雲呑

中国料理の点心(てんしん)の一つで、正式にはフントゥンという。作り方は、小麦粉に卵、水、塩を加えて十分こね合わせ、これをごく薄く伸ばして10センチメートルくらいの正方形に切って皮をつくる。豚ひき肉に少量のしょうが汁としょうゆを入れてよく混ぜ合わせ、小指の先ほどの肉を前述の皮の一部でちょっと包み、熱湯でゆでる。あるいは味つけしたスープに直接入れてもよい。たっぷりのスープに6包みくらい入れて、せん切りネギを浮かして熱いところを供する。これはスープと滑らかな皮を賞味する料理なので、肉はごく少量を包み、包み方も薄い皮が固まらないようなくふうが必要である。中国では正月3日にはこれを食べる風習があるが、正月6日の財神祭には元宝湯(ユワンパオタン)を食べる。元宝湯は餛飩(フントゥン)と同じ皮をつくり、中央に親指大に肉を入れ、対角線に二つ折りにして両端を手前に折り合わせて馬蹄(ばてい)形につくる。すなわち元宝(ユワンパオ)(昔の貨幣)に似た形につくってスープに入れて食べ、発財(フアーツアイ)(金持ちになること)を祈るという。皮がべとつかないようにするには、少量の梘水(かんすい)を入れる。

[野村万千代]

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改訂新版 世界大百科事典 「ワンタン」の意味・わかりやすい解説

ワンタン (雲呑)

中国料理の一種。小麦粉をこねてギョーザの皮と同じくらいにごく薄く伸ばし,6~7cm角に切り,少量の肉と野菜を包んでゆでスープに入れたもの。中国北方では餛飩と書くが,広東省福建省,台湾などでは雲呑,四川省では抄手と書く。〈ワンタン〉は福建語の音に由来する。歴史は古く,多くの古書にワンタンの記事が見られる。最も古いのは,漢代の《方言》にある〈餅これを餛という〉であり,唐代の《資暇録》には餛飩は混沌とした形からきたものとあり,南宋の《武林旧事》に〈冬至に,金持は味や形の異なる百味餛飩を作る〉という記事がある。現代のワンタンは,ゆでたものだけになっているが,以前には蒸したワンタンもあった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワンタン」の意味・わかりやすい解説

ワンタン

雲呑とも書く。中国料理の点心の一種。中国では一般にこん飩 hun-tunといい,うどんの原型ともいわれている。小麦粉でつくった薄い皮で豚ひき肉,ねぎなどを混ぜたあんを包み,スープに入れてゆでる。材料の包み方は皮の一端に少量入れ,端を少し折返して押えたり,のし形に包んだり,皮の中央に入れ,巻いたものを両端を合せて馬蹄形にしたものなどがある。油で揚げる炸雲呑もある。

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