仏教経典における音韻や難解な字句に対する注釈書。中国唐(とう)代につくられ、この名でよばれるものに2種類ある。
(1)648年(貞観22)ころに大慈恩寺の玄応(げんのう)が勅により撰述(せんじゅつ)したもので、25巻からなる。「玄応音義」とよばれる。454部の経律論(きょうりつろん)のなかの熟語についてサンスクリット音を参照して注解している。現存の音義では最古のもので、解釈も正確、多数の古逸書をも引用している点で貴重である。
(2)783年(一説に788年)から807年(一説に810年)の間に慧琳(えりん)が著したもので、100巻からなる。「慧琳音義」とよばれる。『玉篇(ぎょくへん)』『説文(せつもん)』『字林』『字統』『古今正字(ここんせいじ)』『文字典説』『開元文字音義』などを参照しつつ、『大般若経(だいはんにゃきょう)』に始まり『護命放生経(ごみょうほうしょうきょう)』に終わる1220部の経律論の熟語を注解している。本書の特色は、玄応音義を継承し、さらに雲公(うんこう)、基(き)、慧苑(えおん)の音義をも加えて整備した点であろう。音義としてはもっとも精密である。
[伊藤隆寿]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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