中国の韻書。五巻。陸法言(りくほうげん)(560ころ―?)撰(せん)。601年(隋(ずい)の仁寿1)成書。韻書とは、作詩の際に押韻字を選びうる範囲(すなわち韻)を定めた一種の字書。顔之推(がんしすい)、蕭該(しょうがい)、陸爽(りくそう)(著者の父)など著名な学者が六朝(りくちょう)の諸韻書を批判して定めた案により、最善の分韻を示すものとして編まれた。書名は「適切なる韻書」の意。1万2000余の漢字を193の韻に分けた。韻の内部は同音字を集めた小韻に分かれ、反切(はんせつ)を用いてその発音が記された。権威ある韻書として世に迎えられ、唐の王仁昫(おうじんく)『刊謬補缺(かんびょうほけつ)切韻』、孫愐(そんめん)『唐韻』、北宋(ほくそう)の『広韻』など多くの増訂本がつくられ、これらは切韻系韻書と総称される。ただし、これらの分韻にはあまりに細かすぎる点があるため、唐の詩人たちは発音の近い韻を適宜通用して押韻字を選んでいる。『切韻』そのものは亡逸したが、『広韻』と完本(かんぽん)『刊謬補缺切韻』(第二次世界大戦後に発見)が現存し、また種々の切韻系韻書断簡が敦煌(とんこう)などから発見され、これらを通じて『切韻』の内容をだいたい推定できる。推定された『切韻』の反切をもとに言語学的方法により再構成される発音体系(「中古音」という)は、詳細を知ることのできる最古の中国語音として、中国語音韻史の重要な節目(ふしめ)をなしている。
[平山久雄]
『藤堂明保著『中国語音韻論』(1980・光生館)』▽『小川環樹著『唐詩の押韻』(『中国語学研究』所収・1977・創文社)』
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…魏の李登《声類》が嚆矢(こうし)とされるが,いま伝わらない。陸法言《切韻》(601)は,切韻系韻書の原点である。《切韻》には敦煌出土の3種の残欠本があって,大英図書館に蔵されている。…
…これを韻書という。六朝の韻書は隋にはいって集大成され,陸法言の編である《切韻》(601)に結実した。ここにいたって韻の体系化はほぼ完成されたといってよい。…
※「切韻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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