出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
京都府宇治市菟道滋賀谷(とどうしがだに)にある本山修験(しゅげん)宗の寺。山号は明星山(みょうじょうさん)。本尊は千手観音菩薩(せんじゅかんのんぼさつ)。西国三十三所第10番札所。縁起では、開創は宝亀(ほうき)年間(770~780)と伝え、右少弁犬養(うしょうべんいぬかい)が御室戸(みむろと)山の奥の岩淵(いわぶち)に光っていた金銅千手観音像を持ち帰り、光仁(こうにん)天皇が奈良大安寺の僧行表(ぎょうひょう)に伽藍(がらん)の造営を命じて祀(まつ)り、御室戸寺と号したのを始まりとする。のち桓武(かんむ)天皇がビャクダンでつくらせた観音像の胎内に金銅の尊像を納めて大供養(くよう)を営み、三条(さんじょう)天皇は法華(ほっけ)堂を、白河(しらかわ)天皇は常行堂を寄進するなど、代々の天皇の尊崇を得て盛んになっていった。花山(かざん)、三条、白河三帝の離宮となってのちに三室戸寺と改号、1487年(文明19)現在地に再興。現本堂は1814年(文化11)に建立したものである。木造の阿弥陀如来(あみだにょらい)像と両脇侍坐像(きょうじざぞう)、毘沙門天(びしゃもんてん)立像、釈迦(しゃか)如来立像(いずれも平安後期、国重要文化財)のほか、十八神社本殿(室町時代、国重要文化財)、三重塔(江戸時代)など寺宝も多い。
[中山清田]
京都府宇治市にある本山修験宗の寺。明星山と号し,もと天台宗寺門派。西国三十三所観音霊場の第10番札所。寺伝では,宝亀年間(770-781)付近の志津川岩淵で感得した千手観音を光仁天皇に献上し,天皇が大安寺の行表に命じて伽藍を造営させたのが草創という。11世紀には三井寺末寺となり,1099年(康和1)ごろに三井寺の修験僧隆明が堂舎を修造して中興した。こうして平安後期以降,観音巡礼と修験の寺として衆庶の信仰を集めてきた。戦国期には幾度か兵火にかかって荒廃したが,近世後期に堂舎も復興した。現本堂は1814年(文化11)の建築。ほかに阿弥陀堂,不動堂,三重塔,経蔵などがあり,境内は紅葉をはじめ四季の景勝にめぐまれる。本尊観世音菩薩像は秘仏。阿弥陀三尊像,釈迦如来像,毘沙門天像,十八(じゆうはち)神社社殿は重要文化財で,ほかにも多くの什宝が伝蔵される。
執筆者:藤井 学
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