下市(町)(読み)しもいち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「下市(町)」の意味・わかりやすい解説

下市(町)
しもいち

奈良県中央部、吉野郡にある町。1890年(明治23)町制施行。1956年(昭和31)秋野丹生(にう)の2村を編入。国道309号が通じ、近鉄吉野線下市口駅に近い。吉野川南岸と支流の秋野川および丹生川流域を占め、地名は吉野川上流の吉野町上市(かみいち)に対するもの。中心の下市は吉野川と秋野川の合流点付近に発達した市場町で、大峰(おおみね)山登山口にもあたり商業が盛んであった。17世紀末には公許によるわが国最初の手形を流通させている。吉野杉の余材を利用した割箸(わりばし)、三宝(さんぼう)、神具の生産が盛んで、近年杉木目彫(すぎもくめぼり)が特産品に加えられた。下市地区以外は農山村で、下市周辺ではキクとバラ、山間ではカキウメ、クリ、ブドウなどの栽培が行われる。観光開発にも力を入れており、下市温泉、森林公園やすらぎ村などがある。丹生川上流には雨乞(あまご)いの神を祀(まつ)る式内社の丹生川上神社下社がある。面積61.99平方キロメートル、人口5037(2020)。

[菊地一郎]


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