不動産売買(読み)ふどうさんばいばい

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

不動産売買
ふどうさんばいばい

不動産の売却および購入をいう。[竹内俊雄]

不動産所有権の移転

売買は、売り主の「申込み」の意思表示と、これに対する買い主の「承諾」の意思表示との合致により成立する(民法555条)。この売買契約における不動産物件の所有権の移転時期は、原則として売買当事者の意思表示によって定まるが、その意思が不明確なときは、売買契約の成立と同時に所有権も移転するものと解されている(同法176条)。もっとも、このような見解に対しては、取引の慣行や売買契約が有償性を有することから、登記の移転や代金の支払いがなければ、右所有権の移転を認めるべきではないとする有力な反対説が存する。一度締結された売買契約であっても、売り主の詐欺や強迫によって、あるいは買い主の錯誤によって締結された場合には、この契約は取り消されたり(同法96条)、無効となる(同法95条)。このようにして、売買契約が無効・取消しとなった場合には、通常、売買契約の意思表示のなかに所有権を移転する趣旨も含まれているものと考えられるので、不動産物件の所有権移転についても影響が及ぶこととなり、買い主の手から売り主の手に所有権が復帰することとなる。
 先に述べた所有権の移転は、あくまでも売買当事者間においてのことであり、この所有権の移転を売買当事者以外の第三者に主張しうるためには、登記が必要とされる(民法177条)。したがって、もしも、Aが先に売買契約を結んだとしても、まだその所有権移転登記をしていないうちに、Bが同一物件につき売買契約を結んで所有権移転登記を経由したような場合には、Bがこの物件の所有権を確定的に取得することとなる。たとえBが、当該物件については、すでにAが売買契約を締結していることを知っていたとしても、A・B間では、Bが勝つこととなる。もっとも、先のケースでも、Bが、単にAの売買契約の存在を知っているだけではなく、Aが所有権移転登記をしようとすることを詐欺や強迫によって妨げたような場合には(このような場合におけるBは背信的悪意者とよばれている)、Aは、たとえ登記を経由していなくとも、Bに対して、自分が所有権を取得した旨を主張しうることとなる。
 また、登記のないことを主張するについて、正当な利益を有しない第三者に対しては、たとえ登記がなくても、所有権の移転を主張できるものと解される。たとえば、家屋の所有者が、故意でこの家屋を焼いた者に対して損害賠償責任を追及する場合には(民法709条)、その家屋につき登記を要しないこととなる。[竹内俊雄]

無権利者からの購入

無権利者を相手にいかに多額の金銭を支払って取引をしたところで、権利を有効に取得できないことはいうまでもない。わが国における登記には公信力がないものと解されており、不動産の真の所有者でないにもかかわらず、あたかもその所有者であるかのように登記がなされた場合に、このような登記を信じて不動産を買い受けた者も、原則としては保護されないものと解されている。もっとも、近時では、例外的に、このような登記を信じた者の保護を図るために、表見代理の制度を類推適用したり、民法第94条2項を類推適用するなどして、買い主の保護を試みる裁判例も出てきているが、これはあくまでも例外的救済手段であることに留意しなければならない。したがって、不動産の売買については、真の所有者から不動産を購入するよう、取引に際しては徹底的に登記簿を調査する必要がある。[竹内俊雄]

購入した土地の面積が不足していた場合

わが民法は、数量を指示して売買をした物が不足している場合、および物の一部が契約の当時すでに滅失していた場合には、買い主がその不足または滅失を知らなかったときは、売り主に対して代金の減額を請求し、または契約を解除し、損害があれば損害賠償をも請求できるものとしている(565条)。たとえば、AがBから300平方メートルの土地を買い入れたが、実際には270平方メートルしか存在しなかったような場合には、AはBに対して、不足している30平方メートル分につき代金減額を請求できることとなり、Aにとってもしも270平方メートルだけではこの土地を手に入れたことが無意味になってしまうような場合であれば(たとえば、建坪率(けんぺいりつ)の関係上予定どおりの家屋が建築できなくなってしまうような場合)、この売買契約を解除することができることとなる。以上のように、売買の目的物に数量不足分があるような場合には、代金減額や契約の解除ができるが、この代金減額や解除が認められるには、数量が指示された売買(数量指示売買)の場合でなければならない。判例によれば、この数量指示売買とは、「売買当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量等のあることを売り主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた売買を指称する」ものとされている。
 宅地の分譲に際して、各区画の面積を平方メートル数で指示し、単位面積当りの価格に平方メートル数を掛けて各区画の代金を定めて売買するのは、この数量指示売買に該当する。また、宅地分譲の場合に限らず、通常の土地の売買においても、土地の平方メートル数は実測平方メートル数によるとしている場合や、さらには実測平方メートル数によるとはしていないが、一定面積があるものとして(それが登記簿上の面積と同じであるか否かを問わない)、それを単位面積当りの価格に乗じて代金を算出しているような場合にも、この数量指示売買にあたるものと解されている。ただし、登記簿上の平方メートル数に従って代金を定めているようにみえる場合でも、売買当事者が指示された区画を全体として評価し、平方メートル数による計算はいちおうの標準にすぎないようなときは、ここにいう数量指示売買とはならないものと解されているので、注意を要する。[竹内俊雄]

購入不動産に抵当権などの担保権がついている場合

売買の目的不動産に存在した抵当権などの担保権の行使により、買い主がその所有権を失ったときには、この契約を解除することができ(民法567条1項)、もしも買い主が損害を受けた場合には、その賠償をも請求できる(同法567条3項)。また、買い主が抵当権の実行による競売を阻止しようとして、自ら債権者に債務額の全額を弁済したときは、売り主に対してその金額の返還を請求できる(同法567条2項)。そして、この場合にも、買い主が損害を受けた場合には、その賠償の請求も認められている(同法567条3項)。[竹内俊雄]

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