デジタル大辞泉
「習慣流産」の意味・読み・例文・類語
しゅうかん‐りゅうざん〔シフクワンリウザン〕【習慣流産】
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
習慣流産
しゅうかんりゅうざん
Habitual abortion
(女性の病気と妊娠・出産)
ほとんどの流産は受精卵の染色体異常など胎児側の原因で起こるため、予防や治療ができません。しかし、まれに母体の異常など、特別な原因があって流産を繰り返す場合があります。3回以上自然流産を繰り返した場合を習慣流産といい、特別な原因がないか調べるため、検査がすすめられます。
①甲状腺機能低下症、糖尿病などの内分泌機能異常
②抗(こう)リン脂質抗体(ししつこうたい)症候群、膠原病などの自己免疫異常
③カップルのどちらかの染色体に転座などの異常がある(この場合、転座があっても体のどこにも異常はみられない)
④子宮の形の異常、子宮筋腫
⑤子宮の感染症(クラミジアなど)
⑥カップル間の移植免疫的な相性(臓器移植時の拒絶反応に似た免疫的な相性の悪さ)
などによる問題が知られています。
習慣流産では、妊娠はしても胎児が育たない不育症となります。妊娠12週以前は通常の自然流産と同じ経過ですが、12週以降は多くが胎児死亡として見つかります。
原因をさがすためには、前項の原因ごとに①は甲状腺ホルモン検査、血糖検査など、②は自己抗体検査、③は染色体検査、④は超音波検査、X線造影検査、⑤は細菌の検査を行い、⑥は、①~⑤の検査が正常な場合、移植免疫的な相性によるものではないかと疑います。
原因が見つかれば、その治療を試みます。甲状腺機能低下症なら甲状腺ホルモン補充、糖尿病は血糖の正常化、抗リン脂質抗体症候群では抗凝固療法、自己免疫疾患の場合は抗凝固療法やステロイドホルモン治療、子宮の形態異常や子宮筋腫では手術療法、免疫反応としての習慣流産が疑われる場合は、一部に免疫療法が有効なことがあります。
2回までの自然流産(反復流産)は数10人に1人の割合で起こる現象であり、めずらしいことではありませんが、3回以上自然流産を繰り返した場合は、病院で相談してください。
坂井 昌人
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
しゅうかんりゅうざん【習慣流産 Habitual Abortion】
[どんな病気か]
流産することは、確率的にはめずらしいことではありません。
しかし、二度三度くり返すとなると、なにか流産をおこす原因が存在し、それを取り除かないと、またつぎに妊娠したときも流産すると考えるのが妥当です。
続けて3回以上自然流産をくり返す場合を習慣流産といい、2回続けて自然流産した場合に反復流産(はんぷくりゅうざん)といいます。
従来は、3回続けて流産した場合に、習慣流産として検査や治療を行なっていましたが、最近では、結婚、妊娠の高齢化にともない、2回続けて流産した場合にも、習慣流産に準じた検査、治療をする傾向にあります。
[検査と診断]
流産の原因を調べます。習慣流産の原因は多岐にわたり、すべての検査を一度に行なうのは不可能です。
まず、よくありそうな原因疾患の有無を調べることから始まります。
原因は母体側だけでなく、胎児(たいじ)側に問題があることもありますが、治療は不可能なことが多いものです。
母体側に問題がある場合には、おもにつぎのような原因があげられます。
①子宮の形態異常や、子宮腫瘍(しゅよう)、頸管無力症(けいかんむりょくしょう)(「頸管無力症」)などの子宮の病気。
②ホルモンのはたらきの異常。
③感染症。
④糖尿病などの代謝異常。
⑤心血管系や腎機能障害(じんきのうしょうがい)などの婦人科以外の病気によるもの。
母児ともに関連したものでは、血液型不適合妊娠(「血液型不適合妊娠」)や、免疫異常などがあります。
[治療]
原因となる病気を治療します。子宮に病気があるときは、子宮機能を改善するための手術をすることもあります。
ホルモン異常は、卵巣(らんそう)だけでなく、甲状腺(こうじょうせん)など、ほかの内分泌臓器(ないぶんぴつぞうき)に障害がある場合も含まれます。
妊娠の維持には、免疫系のはたらきが重要です。免疫的な考え方をすると、母体にとって胎児は、自分以外のものとして認識され排除されるはずです。
しかし、ふつうは免疫的な維持機構がうまくはたらいて、妊娠を継続することができるのです。
免疫的な妊娠維持機構に問題があり、自然流産をくり返すときは、免疫療法が効果がある場合もあります。
出典 小学館家庭医学館について 情報
習慣流産
しゅうかんりゅうざん
habitual premature delivery
自然流産を連続3回以上繰返すことをいう。自然流産の原因の多くは受精卵の異常によるものであるが,習慣流産の原因には,子宮の異常,黄体機能不全,染色体異常,母体合併症,免疫学的異常などがある。最近,免疫学の進歩とともに母児間の免疫不均衡が解明されつつある。妊娠は免疫学的には同種移植と考えられるが,母体血中には胎児に対する拒絶反応を抑制する物質が存在している。ところが,夫婦間の HLAID/DR抗原 (組織の適合性に関係している) の適合性が高いと,逆に母体内で抗体がつくられにくくなる。この場合に胎児が母体から拒絶反応を受け,流産にいたるのではないかと考えられる。習慣流産の原因が子宮筋腫,頸管無力症,子宮の奇形などにある場合は外科手術が必要で,黄体機能不全の場合はホルモン療法が行なわれる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
習慣流産【しゅうかんりゅうざん】
自然流産が少なくとも3回,妊娠中のほぼ同時期に反復する場合をいい,習慣性になる。原因は子宮の発育不全や奇形,内分泌機能障害,頸管(けいかん)無力症,血液型不適合,栄養異常,感染,精神的因子などが考えられるが,不明のものが多い。妊娠前期の流産には,受精卵の細胞遺伝的な異常によるものが多い。治療は安静,ホルモン療法,子宮弛緩(しかん)剤投与など。子宮奇形,頸管無力症に対しては手術。→流産
→関連項目人工流産
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の習慣流産の言及
【流産】より
…さらに流産の様式により,妊娠が自然に中絶し流産するものを自然流産,人工的に妊娠を中絶し流産させるものを人工流産と呼ぶ。なお連続3回以上流産を繰り返すものを習慣流産という。
[原因]
流産は多種多様の原因によって起こるが,現在,原因として比較的明確であり頻度が高いものを,大別して表に示す。…
※「習慣流産」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」