中葉症候群(読み)ちゅうようしょうこうぐん

六訂版 家庭医学大全科 「中葉症候群」の解説

中葉症候群
ちゅうようしょうこうぐん
Middle lobe syndrome
(呼吸器の病気)

どんな病気か

 右中葉(うちゅうよう)気管支あるいは左舌区(さぜつく)気管支がふさがって、中葉、舌区が拡張不全を起こした状態をいいます。

原因は何か

 右中葉気管支あるいは左舌区気管支は走行が長く、周囲にリンパ節があるため、解剖学的にふさがりやすいと考えられます。このためリンパ節が腫大する病気では、閉塞(へいそく)を引き起こします。

 また非結核性抗酸菌(ひけっかくせいこうさんきん)(非定型抗酸菌)は本来毒性の弱い菌であり、肺局所の感染防御能が低下する肺結核後遺症や、じん肺などの基礎疾患がある場合に二次的に感染することが多いと考えられてきました。

 しかし近年、基礎疾患をもたない非結核性抗酸菌症が少なからず存在することが明らかになりました。この初発の病変は中葉や舌区に好発し、小結節影や、進行すると気管支拡張を生じることが明らかになっています(図39)。

症状の現れ方

 血痰(けったん)(せき)喀痰(かくたん)微熱胸痛などがみられます。

検査と診断

 胸部X線像で、中葉あるいは舌区に浸潤影(しんじゅんえい)や吸気の低下が認められます。

治療の方法

 感染症に対しては抗菌薬血痰には止血薬喀痰が持続する場合には去痰薬(きょたんやく)が使われます。非結核性抗酸菌症では、これに対する抗菌薬が使われます。

千田 金吾


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「中葉症候群」の解説

ちゅうようしょうこうぐん【中葉症候群】

 肺は、肺に入った気管(きかん)が枝分かれするのにしたがって、その先の肺の実質組織も、右の肺は、上(じょう)・中(ちゅう)・下葉(かよう)に、左の肺は、上・下葉に分かれています。
 中葉症候群とは、右の中葉、または左で中葉にあたる舌状区(ぜつじょうく)という部分におこる無気肺(むきはい)(コラム「無気肺」)や慢性炎症をいいます。
 もともとは、結核(けっかく)によって気管支周囲のリンパ節が腫(は)れ、気管支を圧迫しておこる病変をさすことばで、それが中葉におこりやすいとされていたために、こう呼ばれました。
 しかし、実際には、このようなことがおこるのはまれで、現在では、気管支拡張症(きかんしかくちょうしょう)(「気管支拡張症」)などによる、中葉気管支の慢性的な炎症が、おもな原因とされています。
 ただ、日本においては、肺がんなどでおこる中葉の無気肺や閉塞肺炎(へいそくせいはいえん)(気管支が狭くなり、十分に換気が行なわれないためにおこる肺炎)をさすこともあります。
 もとの意味の中葉症候群に対しては、対症療法として去痰薬が用いられます。感染によっておこっている場合は、抗生物質が用いられます。いずれにしても、患者さんには、禁煙してもらいます。
 炎症をくり返す場合は、根治のために手術(中葉切除術)も考慮します。
 肺がんが原因の場合は、手術、放射線治療などが行なわれます。
 がんが気管支の内側に突出し、気管を閉塞している場合は、早めに呼吸困難などの症状が出るために発見も早く、切除可能なことが多いのですが、がんがリンパ節などへ転移し、気管支を外側から圧迫して症状が出ている場合は、すでに手術ができないほど進んでいることが多いのです。この場合は、放射線治療または抗がん剤と放射線治療を併用する療法などが行なわれます。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中葉症候群」の意味・わかりやすい解説

中葉症候群
ちゅうようしょうこうぐん

右中葉の無気肺(肺拡張不全)をきたす病態を認めるのもをいう。胸部CT所見では無気肺と気管支拡張症を示すことが多い。同様の病変が左上葉舌区にも見られるときは、中葉舌区症候群という。頑固な咳(せき)、痰(たん)、血痰を主症状とすることが多い。リンパ節腫脹(しゅちょう)、肺結核、非結核性抗酸菌症、肺癌(がん)などが原因となる。

[山口智道]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の中葉症候群の言及

【無気肺】より

…原因は,痰の気管支内貯留,気管支の炎症,腫瘍による圧迫,および気管支周囲の病変による外部からの気管支圧迫などである。肺の中葉に発生した場合は,とくに中葉症候群middle lobe syndromeと呼ばれる。無気肺は感染の主要な原因となるので,早急に再膨張を図らねばならない。…

※「中葉症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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