中陰
ちゅういん
死んでから次の生を受けるまでの中間期における存在。サンスクリット語アンタラー・ババantarā-bhavaの訳。中有(ちゅうう)とも訳す。陰(いん)も有(う)も存在の意。仏教では輪廻(りんね)の思想に関連して、生物の存在様式の一サイクルを四段階(四有(しう))に分ける。すなわち、中有、生有(しょうう)、本有(ほんぬ)、死有(しう)であり、このうち生有はいわば受精の瞬間、死有は死の瞬間であり、本有はいわゆる一生、中有は死有と生有の中間の存在である。中有は7日刻みに七段階に分かれ、各段階の最終時に生有に至る機会があり、遅くとも七七日(四十九日(しじゅうくにち))までにはすべての生物が生有に至るとされている。遺族はこの間、7日ごとに供養を行い、四十九日目には満中陰(まんちゅういん)の法事を行う。四十九日という時間は、死体の腐敗しきる期間に関連するとみられる。
[定方 晟]
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ちゅう‐いん【中陰】
〘名〙 仏語。
※往生要集(984‐985)大文一「彼人震怒。遂見二殺害一。受二中陰身一」
② 人の死後四九日間の称。人は死後七日を一期としてまた生を受けるという。極悪・極善の者は死後直ちに次の生を受けるが、それ以外の者は、もし七日の終わりにまだ生縁を得なければさらに七日、第二七日の終わりに生を受ける。このようにして最も長い者は第七期に至り、第七期の終わりには必ずどこかに生ずるという。
※日本紀略‐応和四年(964)六月一六日「前中宮職於二東院一被レ修二中陰法事一」
※高野本平家(13C前)三「され共、中府が中陰
(チウイン)に八幡の御幸あって御遊ありき。御歎の色、
一事も是をみず」
③ 人の死後四九日目にあたる日。七七日。
※米沢本沙石集(1283)一〇本「
遺言に、処分状は中陰
(チウイン)すぎて開く可き由、云置てければ」
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中陰【ちゅういん】
中有(ちゅうう)とも。仏教で人間その他の衆生が死んでから,次の世に生じるまでの期間をいう。この期間を49日とする説から,この期間中に浮遊している亡霊に,幸福な次生を得させるために,7日ごとに読経,法要を営む風が生じた。49日目を満中陰という。
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中陰
仏教において、死んで次の生を得る間の四十九日間を、中陰と考えます。四十九日を満中陰といいます。=中有(ちゅうう)
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ちゅういん【中陰】
死後49日の間をいい,この間に死者は死の国へ行くという。四十九日ともいう。この期間,7日ごとに墓参りをし塔婆を建てる風がある。さらには埋葬した死骸の変わりない様子を知るために,毎朝未明に新墓へ息子が参ったり(京都府舞鶴),水祭といって49日まで,毎日夕方墓地へ米と水を持って行ったりする(対馬阿連)。とくに対馬ではヤマアガリといい,野辺に喪屋を作ってここに住み,中陰中に村へ帰ることが禁じられた。これらは奈良時代末期から平安時代初期にかけて律令政府から積極的に推進された3年間の墓守りの風習のなごりで,朝鮮から伝来の風習である。
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デジタル大辞泉
「中陰」の意味・読み・例文・類語
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世界大百科事典内の中陰の言及
【有】より
…なお,後世のベーダーンタ学派では,仏教の中観派の用法をまねて,ブラフマン(=アートマン)を勝義(真実)有,現象界のものを世俗有と言い分ける。仏教一般では,生死輪廻する主体としての〈有bhava〉を想定し,特に死後再生するまでの間を〈中有(中陰)〉という。またヒンドゥー教の聖典であるプラーナ文献でも,ウッダーラカ・アールニの〈有〉をうけて,天地開闢の始源的存在を〈有〉に帰している。…
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