丸本(読み)マルホン

デジタル大辞泉 「丸本」の意味・読み・例文・類語

まる‐ほん【丸本】

省略・欠文などがなく、内容が全部そろっている書物。完本。→欠本抄本抜き本
義太夫節の本で、一部分を抜粋した抜き本などに対し、1曲全部を1冊に収めた版本院本
[類語]完本

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精選版 日本国語大辞典 「丸本」の意味・読み・例文・類語

まる‐ほん【丸本・正本・院本】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 内容や章、冊などが欠けることなく全部揃っている書物。完本。抜本(ぬきほん)、抄本、欠本などに対していう。
  3. 浄瑠璃の詞章の全編一冊に収めてある版本。院本(いんぽん)
    1. [初出の実例]「正本(マルホン)にては〈略〉、あの時代の江戸浄るりにあまたあり」(出典滑稽本浮世風呂(1809‐13)三)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「丸本」の意味・わかりやすい解説

丸本
まるほん

義太夫(ぎだゆう)節の一曲全部の詞章を収めた版本をいう。一曲のうちの一段を収めた段物、抜き本(稽古(けいこ)本)に対することば。普通、義太夫節だけに用い、他の流派の浄瑠璃(じょうるり)の場合には正本(しょうほん)と称している。また、「院本」と書いて「まるほん」と読むこともあるが、これは中国で戯曲を意味する語を転用したもの。浄瑠璃界では新作上演の際には丸本を刊行するのが慣例で、衰退期までそれは守られていた。初期の浄瑠璃の正本は絵入りの細字本で読み物として刊行されていたが、やがて浄瑠璃を稽古する人が増えたため、宇治加賀掾(かがのじょう)が1679年(延宝7)稽古用の大字八行本『牛若千人切(うしわかせんにんぎり)』を刊行した。その後、義太夫節の流行に伴い、八行本が続々出版され、やがて1710年(宝永7)の『吉野都女楠(よしののみやこおんなくすのき)』以来七行本が始まり、その後、九行、十行、十一行、十二行本なども刊行されたが、七行の稽古本が丸本の標準的な形式となっている。

[山本二郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「丸本」の意味・わかりやすい解説

丸本 (まるほん)

義太夫節の詞章を記した本。1曲のうちの1段だけを抜き出した床本(ゆかほん)(〈段物〉〈抜本〉と呼ばれる)に対して,全曲収めたものを丸本という。まるごと記してあることからこの呼称が生まれたという説もある。北宋の雑劇を継承した金の演劇の曲本の称をまねて,〈院本〉と書いて〈まるほん〉と呼ばせることもあった。また,〈丸本〉の称は義太夫節の正本だけにいい,他の流派の浄瑠璃では用いず正本と呼んでいる。
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百科事典マイペディア 「丸本」の意味・わかりやすい解説

丸本【まるほん】

院本とも書いて〈まるほん〉と読む。義太夫節の一曲全部を記した本。浄瑠璃のある段だけを抜き出した抜本(ぬきほん)に対し,省略なく全段を記した完本をいう。古くは1ページ17,18行に及んだが,語り本が版行され始めて,1679年ごろから8行本,さらに1711年ごろから7行本が普通に行われた。→正本(しょうほん)
→関連項目院本

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「丸本」の解説

丸本

正式社名「株式会社丸本」。英文社名「MALMOTO」。食料品製造業。昭和39年(1964)前身の「丸本鶏肉店」創業。同46年(1971)「丸本食鳥株式会社」設立。平成5年(1993)現在の社名に変更。本社は徳島県海部郡海陽町大井字大谷。食肉・食肉加工品卸会社。主力はブランド地鶏「阿波尾鶏」。ペットフードの製造も手がける。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「丸本」の意味・わかりやすい解説

丸本
まるほん

院本とも書く。浄瑠璃本の一種。主として義太夫節の1曲を省略なしに丸ごと収めた版本。通常7行または8行,10行など。新作浄瑠璃の初演と同時に刊行され,浄瑠璃の原典として尊重される。1曲のうちの1段または一部分だけを抜き出した「抜本」,稽古用の抜本である「稽古本」などに対していう言葉。

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世界大百科事典(旧版)内の丸本の言及

【義太夫節】より

…このころが人形浄瑠璃の勢いがもっともさかんで,生彩をはなった時期で,〈操り段々流行して歌舞伎は無きが如し〉(《浄瑠璃譜》)とまでいわれるほどの繁栄をみた。また18世紀初めからは,歌舞伎の音楽としても用いられるようになった(丸本物)。 しかし,舞台が大がかりになり,人形が写実的になって人間に近づき,竹田出雲並木宗輔らや,名人たちの相次ぐ逝去,火災や不祥事件などが重なって,衰退のきざしをみせはじめる。…

【正本】より

…版元にもよるが,延宝期以後のものとしては,8行ないし7行のものが最も信頼のおける正本である。絵入の正本でなく,太字の正本を俗に丸本(まるほん)ともいう。1段だけの抜本に対し作品全部を収めた意である。…

※「丸本」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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