紀州藩付家老(つけがろう)で新宮(しんぐう)領に配置されていた領主の水野土佐守忠央(ただなか)が貴重書物を集めて出版した叢書(そうしょ)。水野忠央は学問を好み、とくに国学を重視した。丹鶴書院に数万巻の貴重な書物を集め、丹鶴叢書編輯(へんしゅう)所をつくり、山田常典(つねのり)を中心に小中村清矩(こなかむらきよのり)、黒川真頼(まより)、本居大平(もとおりおおひら)らを編纂(へんさん)委員とし、国史、記録、故実、歌集、物語などを集めて、七帙(ちつ)171部、162冊の叢書を編纂した。天保(てんぽう)年間(1830~44)に編纂に着手し、1847年(弘化4)に出版を始め、1853年(嘉永6)に第七帙を出版、ほかに『丹鶴図譜』『丹鶴外書』などがある。江戸幕府、紀州藩に献上し、江戸京橋の本屋徳兵衛(とくべえ)の店から発売。その精美なること、これにすぐるものはないといわれた。当時諸藩では漢籍の出版が多かったが、丹鶴叢書のような国書は少なかった。
[安藤精一]
『水野忠央編『丹鶴叢書』(復刻・1976・臨川書店)』▽『『新宮市誌』(1937・新宮市)』▽『『新宮市史』(1972・新宮市)』
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