古文書学上の用語。一般に〈一,何々之事〉として次に述べる本文の内容を個条書きにしてある文書をその外見から事書といい,一通の文書の中でも文書の書きだしの部分(端作(はしづく)り)が〈何々之事〉として次の本文に続いている場合,その部分を指して事書という。またとくに寺院内で衆徒らが群議して決議文を作成した場合,たとえ一個条の決議であっても,その端作りは〈何々之事〉となっているため,これを事書と呼んでいる。興福寺や延暦寺などの大衆が神木や神輿をかついで強訴を企てる場合には,群議を経て事書を作成して朝廷に提出するのが常であった。さらに鎌倉・室町幕府では所領争いを専門に扱う裁判機関の引付(ひきつけ)が,判決の草案を作り上部機関の評定衆の会議に送って判断を求めるが,この草案(引付勘録)の内容を個条書きに要約した文書を,引付勘録事書,略して事書と呼ぶこともある。このほか和歌の詞書(ことばがき)の部分を事書と呼ぶことがあるが,これは文書の端作りに事書が多かったため,和歌の端作りに相当する詞書の部分をも事書と呼んだものであろう。
執筆者:益田 宗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(1)文書の本文の前に,文書の内容を「何々の事」というかたちで簡潔に要約した部分。下文(くだしぶみ)や下知状(げちじょう)・訴陳状・上申文書などでみられる。下知状では冒頭に,下文では冒頭の「下す 某」の次にくる。これに対して本文を事実書(じじつがき)という。(2)「一,何々事」のように箇条書きにする形式,また,その文書。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…個条の頭を一(ひとつ)で始める形式で,一つ書きともいう。第1行に内容を摘記する場合には,一□□の事とする場合があり,この事書も条書と言えよう。意志の伝達,応答には正確・徹底を要求されるので,戦国期以降用いられた文書形式であり,広くは禁制等の法令の条文もこの分類に入ろう。…
※「事書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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