事書(読み)コトガキ

デジタル大辞泉 「事書」の意味・読み・例文・類語

こと‐がき【事書(き)】

文書で「一、…の事」という書式で書くこと。また、その書式で書いたもの。箇条書き。
古文書学用語公文書本文の前にあって、「…事」と主旨を要約して記載した部分
(「言書き」とも書く)和歌初めに書く小序詞書ことばがき
「―に私の家にてと書かれたれば」〈謡・定家

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精選版 日本国語大辞典 「事書」の意味・読み・例文・類語

こと‐がき【事書】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 文書で、「一、何々之事」と箇条を立てて書くこと。また、その体裁で書かれた文書。箇条書。
    1. [初出の実例]「ことかきに可書之由仰内記了」(出典:殿暦‐長治二年(1105)八月一三日)
  3. 法令をいう。
    1. [初出の実例]「可遏殺罪輩之由、有其沙汰。被事書云々」(出典:吾妻鏡‐文応元年(1260)正月二三日)
  4. 古文書学の用語。公文書で、本文の前にあって本文の主旨を要約し、「何々事」と記載してある見出し部分。
  5. 「ひきつけかんろくことがき(引付勘録事書)」の略。
    1. [初出の実例]「為御引付成敗之間、不取捨勘録〈略〉三十一ケ条事書一通に続合之て任御評定之旨」(出典:高野山文書‐正応五年(1292)正月一五日・太田庄文書申出目録)
  6. 中世寺院衆徒などが合議の意志を箇条書にして上級権力者に提出した文書。
    1. [初出の実例]「東大寺衆徒僉議事書」(出典:東大寺文書‐第一回採訪四・建武二年(1335)一〇月二二日・東大寺衆徒群議事書草案)
  7. 和歌の前に添える、歌の題や趣旨を書いた文。詞書。
    1. [初出の実例]「古今事書者、文屋康秀為参河下向、出立于県見哉之由、誘引小野小町云々」(出典:吾妻鏡‐建暦二年(1212)一〇月一一日)
    2. 「新千載集を撰ばれけるに、委細の事書を載せられて」(出典:太平記(14C後)三三)
  8. 文中に施す注釈
    1. [初出の実例]「取具臨時はそばに細字にことがきあり」(出典:玉塵抄(1563)三三)

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改訂新版 世界大百科事典 「事書」の意味・わかりやすい解説

事書 (ことがき)

古文書学上の用語。一般に〈一,何々之事〉として次に述べる本文の内容を個条書きにしてある文書をその外見から事書といい,一通の文書の中でも文書の書きだしの部分(端作(はしづく)り)が〈何々之事〉として次の本文に続いている場合,その部分を指して事書という。またとくに寺院内で衆徒らが群議して決議文を作成した場合,たとえ一個条決議であっても,その端作りは〈何々之事〉となっているため,これを事書と呼んでいる。興福寺や延暦寺などの大衆が神木や神輿をかついで強訴を企てる場合には,群議を経て事書を作成して朝廷に提出するのが常であった。さらに鎌倉・室町幕府では所領争いを専門に扱う裁判機関の引付(ひきつけ)が,判決の草案を作り上部機関の評定衆の会議に送って判断を求めるが,この草案(引付勘録)の内容を個条書きに要約した文書を,引付勘録事書,略して事書と呼ぶこともある。このほか和歌の詞書(ことばがき)の部分を事書と呼ぶことがあるが,これは文書の端作りに事書が多かったため,和歌の端作りに相当する詞書の部分をも事書と呼んだものであろう。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「事書」の解説

事書
ことがき

(1)文書の本文の前に,文書の内容を「何々の事」というかたちで簡潔に要約した部分。下文(くだしぶみ)や下知状(げちじょう)・訴陳状・上申文書などでみられる。下知状では冒頭に,下文では冒頭の「下す 某」の次にくる。これに対して本文を事実書(じじつがき)という。(2)「一,何々事」のように箇条書きにする形式,また,その文書。

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世界大百科事典(旧版)内の事書の言及

【条書】より

…個条の頭を一(ひとつ)で始める形式で,一つ書きともいう。第1行に内容を摘記する場合には,一□□の事とする場合があり,この事書も条書と言えよう。意志の伝達,応答には正確・徹底を要求されるので,戦国期以降用いられた文書形式であり,広くは禁制等の法令の条文もこの分類に入ろう。…

※「事書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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