五蘊(読み)ゴウン

デジタル大辞泉 「五蘊」の意味・読み・例文・類語

ご‐うん【五×蘊】

《「蘊」は、梵skandhaの訳。五つ積集の意》仏語。存在を構成する五つの要素。すなわち、物質的、身体的なものとしての色蘊しきうん、感覚作用としての受蘊表象作用としての想蘊意志欲求などの心作用としての行蘊ぎょううん対象を識別する作用としての識蘊五陰ごおん

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精選版 日本国語大辞典 「五蘊」の意味・読み・例文・類語

ご‐うん【五蘊】

  1. 〘 名詞 〙 ( [梵語] skandha の訳。「蘊」はあつまりの意 ) 仏語。色(物質)、受(印象・感覚)、想(知覚・表象)、行(意志などの心作用)、識(心)の五つをいい、総じて有情の物質、精神両面にわたる。因縁によって生ずる有為法をいう。また、心身環境をも示す。五陰(ごおん)
    1. [初出の実例]「五蘊六根。雖陰陽之陶冶」(出典:本朝文粋(1060頃)一三・為空也上人供養金字大般若経願文〈三善道統〉)
    2. [その他の文献]〔般若心経〕

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改訂新版 世界大百科事典 「五蘊」の意味・わかりやすい解説

五蘊 (ごうん)

原始仏教以来説かれる存在分類法。サンスクリットでは,パンチャ・スカンダpañca-skandhaという。生命的存在である〈有情(うじよう)〉を構成する五つの要素すなわち,色(しき),受(じゆ),想(そう),行(ぎよう),識(しき)の五つをいう。このうち(ルーパrūpa)には,肉体を構成する五つの感覚器官(五根)と,それら感覚器官の五つの対象(五境)と,および行為の潜在的な残気(無表色(むひようしき))とが含まれる。受(ベーダナーvedanā)とは,苦,楽,不苦不楽の三つの感受作用をいう。想(サンジュニャーsaṃjñā)とは対象が何であるかを認知する知覚作用をいう。行(サンスカーラsaṃskāra)とは,行為を生み出す意志作用をはじめとするさまざまな心的作用をいう。識(ビジュニャーナvijñāna)とは,広く感覚・知覚・思考作用を含んだ認識作用であり,眼識耳識,鼻識,舌識,身識,意識の六識をいう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「五蘊」の意味・わかりやすい解説

五蘊
ごうん

仏教用語。五陰(おん)ともいう。「蘊」は集まりの意味で、サンスクリット語のスカンダskandhaの訳。仏教では、いっさいの存在を五つのものの集まりと解釈し、その五つも、やはりそれぞれ集まりからなる、とする。五つとは、色(しき)蘊(対象を構成している感覚的・物質的なものの総称)、以下は主体の意識において、受蘊(なんらかの印象を受け入れること)、想蘊(イメージをつくる表象作用)、行蘊(ぎょううん)(能動性をいい、潜在的にあり働く)、識蘊(具体的に対象をそれぞれ区別して認識する働き)をいう。このように、いっさいを、色―客観的なもの、受・想・行・識―主観的なものに分類する考え方は、仏教の最初期から一貫する優れた伝統とされる。

[三枝充悳]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五蘊」の意味・わかりやすい解説

五蘊
ごうん
pañca-skandhā

仏教用語。五陰 (ごおん) ともいう。物質・精神より成る人間存在の5つの局面または構成要素。第1は色蘊。五根,五境など物質的なもののことで,人間についてみれば,身体ならびに環境にあたる。第2は受蘊。対象に対して事物を感受する心の作用のこと。第3は想蘊。対象に対して事物の像をとる作用。第4は行蘊。対象に対する意志やその他の心の作用のこと。これら3つの心作用は,心王所有の法あるいは心所といわれる。第5は識蘊。対象を了別識知する心そのもの。識蘊は心自体のことであるから,心王と呼ばれる。仏教では,あらゆる因縁に応じて五蘊がかりに集って,すべての事物が成立しているから,五蘊仮和合,五蘊皆空と説かれる。 (→五大 )

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百科事典マイペディア 「五蘊」の意味・わかりやすい解説

五蘊【ごうん】

五陰(ごおん)とも。仏教で人間存在を構成する要素をいう。また人間存在を把握する,色(しき),受(じゅ),想(そう),行(ぎょう),識(しき)の五つの方法をいう。色蘊は物質要素としての肉体。受蘊は感情,感覚などの感受作用。想蘊は表象,概念などの作用。行蘊は受・想・識以外の心作用の総称で,特に意志。識蘊は認識判断の作用または認識の主体的な心。また宇宙全体の構成要素ともされ,絶えず生滅変化するものなので,常住不変の実体はないとするのが,仏教の根本教説の一つ。

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世界大百科事典(旧版)内の五蘊の言及

【ダルマ】より

…(3)ものごととしてのダルマ 〈保つもの〉〈支持するもの〉という語源から発して,仏教では,ダルマは,身心を中心として,世界を成り立たしめるさまざまな要素としても解せられた。その一つの分類が,五蘊(ごうん),十二処,十八界というものである。五蘊というのは,身心を基本的に構成する色(しき),受,想,行(ぎよう),識という五つのグループのことである。…

※「五蘊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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