ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「井筒俊彦」の意味・わかりやすい解説
井筒俊彦
いづつとしひこ
[没]1993.1.7. 神奈川
哲学者,言語学者。多くの言語に精通し,古今東西の文献を読みこなして得た,該博な知識を研究にいかした。 1937年慶應義塾大学文学部卒業後,カナダのマックギル大学,イラン王立哲学アカデミーで学び,1941年,27歳にして名著と評価された『アラビア思想史』を発表。 1947年慶大教授に就任。イスラム神秘主義,比較思想,さらに東洋哲学へと研究の場を広げた。 1956年に『言語と魔術』を英文で発表,以来多くの作品を外国語で執筆。スーフィズムと道教との哲学概念の比較論文など,海外で高い評価を受けた。 1969年に慶大を辞し,マックギル大学教授に就任,その後イラン王立哲学アカデミー教授となるが,革命の動乱のなかの 1979年に帰国。イスラム神秘主義をテーマとした『イスラーム哲学の原像』 (1980) ,『イスラーム文化』 (1982) のほか,『意味の構造』 (1972) ,『意識と本質』 (1983) などの言語哲学的著作,『禅仏教の哲学に向けて』 (1977) ,『大乗起信論』を解説した『意識の形而上学』 (1993) ,『井筒俊彦著作集』 12巻 (1993) など,著書多数。コーランの口語訳 (1957~58) も高い評価を受けた。
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