日本大百科全書(ニッポニカ) 「亜鉛尖晶石」の意味・わかりやすい解説
亜鉛尖晶石
あえんせんしょうせき
gahnite
亜鉛(Zn)とアルミニウム(Al)とからなる尖晶石(スピネル)族の一つ。Znを置換するマグネシウム(Mg)や二価鉄(Fe2+)がみられるのが普通で、苦土尖晶石spinel(MgAl2O4)や鉄尖晶石との間に広範囲に固溶体を形成する。自形は正八面体、あるいはこれを基調とする立体。ごくまれに斜方十二面体の面が出ることがある。尖晶石族のなかでは唯一石英と共存する。
花崗岩(かこうがん)質ペグマタイト、気成鉱床、中~高変成度の広域変成岩、変成岩中の層状変成鉱床、変成ペグマタイト、変成ボーキサイト中などに産する。アメリカのメインMaine州オーバーンAuburn産のものは直径7センチメートルに及ぶ。日本では福島県石川郡石川町や茨城県北茨城市華川(はなかわ)町花園の花崗岩質ペグマタイト、岐阜県恵那(えな)市河合(かわい)鉱山(閉山)の気成鉱床の母岩中などから発見されている。共存鉱物は日本の例では白雲母(しろうんも)、微斜長石、石英、鉄礬(てつばん)ざくろ石など。
同定は暗緑色~暗青色の色調。比重4.61は非常に大きく感じる。高い硬度。大きい塊では結晶面は出ないが、小さな独立粒ではたいてい正八面体の輪郭がみられる。白い紙の上で粉砕すると、青系統の色調と灰色の条痕(じょうこん)が観察でき、もう一度たたくと正八面体の面に平行に裂開が発生する。英名は本鉱を最初に発見して研究したスウェーデンの鉱物学者ヨハン・ゴットリーブ・ガーンJohan Gottlieb Gahn(1745―1818)にちなむ。
[加藤 昭 2015年12月14日]
亜鉛尖晶石(データノート)
あえんせんしょうせきでーたのーと
亜鉛尖晶石
英名 gahnite
化学式 ZnAl2O4
少量成分 Fe2+,Mg,Mn,Fe3+,Cr3+,Ga3+,Ti,Sn4+
結晶系 等軸
硬度 7.5~8
比重 4.61。たいていのものはこれより小さい
色 暗緑,暗青。藍色調になることが多い
光沢 ガラス
条痕 灰
劈開 無。正八面体の面に沿って裂開
(「劈開」の項目を参照)