気成鉱床(読み)きせいこうしょう(英語表記)pneumatolytic deposit

精選版 日本国語大辞典 「気成鉱床」の意味・読み・例文・類語

きせい‐こうしょう ‥クヮウシャウ【気成鉱床】

〘名〙 気成作用によって生じた鉱床マグマ固結して岩石となるとき、岩石にとりこまれずに残った高温揮発性成分が、付近の岩石と化学反応を起こしてできたもので、電気石紅雲母蛍石トパーズ斧石スカポライトなど揮発性元素を含む鉱物産出する。スズタングステン・モリブデン鉱床、金・銅鉱床など。熱気鉱床。

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デジタル大辞泉 「気成鉱床」の意味・読み・例文・類語

きせい‐こうしょう〔‐クワウシヤウ〕【気成鉱床】

気成作用で形成された鉱床。気成鉱物ほか錫石すずいしタングステン鉱物などを産出。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「気成鉱床」の意味・わかりやすい解説

気成鉱床
きせいこうしょう
pneumatolytic deposit

水などの揮発性成分に富むマグマ残液に関連して生成する鉱床。マグマ固結の過程(マグマ結晶分化作用ともいう)で、マグマから親石元素は珪(けい)酸塩鉱物として、親鉄元素、親銅元素、親金元素はそれぞれ酸化鉱物、硫化鉱物、単体鉱物として晶出する。マグマ固結の末期には、マグマ残液は水H2O、二酸化炭素CO2硫化水素H2Sの流体のほかに、フッ素F、塩素Cl、それにリチウムLi、ホウ素Bなどの揮発性成分に富んでくる。この理由によりマグマ残液は、高い蒸気圧をもつ流体でマグマ頂部に濃集する。また、揮発性成分に富む流体はマグマ残液濃集帯周辺の母岩のクラック中に濃集する傾向ももつ。これらの鉱化作用により鉱床母岩(とくに花崗(かこう)岩頂部)の変質帯やその周辺部の鉱脈中に、電気石、鱗雲母(りんうんも)(リチア雲母)、黄玉(おうぎょく)(トパーズ)、スカポライト、蛍石(ほたるいし)、斧石(おのいし)などの気成鉱物が生成する。気成鉱物に伴って、石英、緑柱石、錫石(すずいし)、タングステン鉱物(灰重石、タングステン重石)などが一般的に随伴することも気成鉱床の特徴である。

[金田博彰]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「気成鉱床」の意味・わかりやすい解説

気成鉱床
きせいこうしょう
pneumatolytic deposit

マグマの末期,気成時代に形成されたと考えられる鉱床。この種の鉱床は,スズ石,鉄マンガン重石,輝水鉛鉱,黄銅鉱のほかに,雲母,電気石,トパーズ,蛍石などの鉱物を特徴とする。これらはマグマの温度が下がり,大部分のケイ酸塩鉱物が晶出したあと,マグマの残り (残漿) に揮発性成分が濃集する時期につくられたものである。マグマの残りかすに濃集したガスは水,ホウ素,塩素,フッ素,硫黄,二酸化炭素,硫化水素,塩化水素,硝酸などで,いわゆる鉱化ガスと呼ばれている。これらはマグマの粘性を下げ,結晶作用の行われる範囲を広め,マグマ中の金属類を揮発性のフッ化物,塩化物としてマグマ中に集中させ,運搬するものと考えられる。このようなガス状の物質が周囲の岩石の割れ目などに侵入して,まわりの岩石と反応し鉱床がつくられると考えられる。

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百科事典マイペディア 「気成鉱床」の意味・わかりやすい解説

気成鉱床【きせいこうしょう】

気成作用で形成されたと考えられた鉱床。一般には必ずしも生成機構を意識せず,電気石,トパーズなど揮発性成分を含有する鉱物を顕著に伴う鉱床を気成鉱床と呼んだが,最近は用いられない。タングステンやスズなどの鉱床がある。
→関連項目火成鉱床

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世界大百科事典(旧版)内の気成鉱床の言及

【火成鉱床】より

…鉱化流体は高温(200~600℃程度)であるが,常温の水に近い比重をもち,ガス状よりもむしろ液状に近いもので,地殻内を流動する高温水(熱水)の一つである。後マグマ鉱床のうち,とくにハロゲンやホウ素などを含む鉱物が濃集する鉱床は,気体に近い物性をもつ鉱化流体から形成されたと考えられ,気成鉱床とよばれた。しかし現在では鉱化流体は液体に近い物性をもつことが知られており,気成鉱床も熱水鉱床の一種と考えてよい。…

【鉱化流体】より

…このため近年では鉱床を生成する流体を一般に鉱化流体とよぶようになった。古くは,純水の臨界温度(約374℃)より高温の熱水は,その物理的性質がガスに近い状態であると考えられ,そのような流体から生成したと思われる鉱床を気成鉱床pneumatolytic depositとよんで熱水鉱床から区別していた。しかし通常の鉱化流体はかなりの塩類を溶解しており,その臨界温度は純水の場合よりかなり高い。…

※「気成鉱床」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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