道路交通法第9章に規定する反則行為に関する処埋手続の特例。第二次世界大戦後、経済の復興に伴って厳しさを増した道路交通情勢を反映して、道路交通法(1960年以前は道路交通取締法)違反は増加の一途をたどっていた。この制度が導入される以前は、これらの違反の多くは犯罪として交通切符制度(いわゆる「赤切符」)により処理されていたが、違反者の増加に伴い、その処理に多くの時間と労力を要した。他方、大量の違反者がその違反の軽重を問わず、すべて犯罪者として刑罰を科されることは、刑罰の感銘力を乏しくし、その効果を減殺するような結果となっていた。これは、刑事政策的見地からも問題があるだけではなく、交通の安全は国民の積極的努力に待つ点が多いとする交通政策上の立場からも好ましいものとはいえない状況であった。
そこで、自転車などを除く車両などの運転者が犯した違反行為のうち、比較的軽微であって、現認(警察官・交通巡視員が違反行為を現場で確認できるもの)、明白、定型のものを「反則行為」とし、当該反則行為をした者(反則者)に対しては、警視総監または道府県警察本部長が定額の反則金の納付を通告し、反則者が反則金を任意に納付したときは、その反則行為について刑事訴追されず、一定期間内に納付がなかったときは本来の刑事手続が進行するという、「交通反則通告制度」が1967年(昭和42)の道路交通法改正により導入された(1968年7月1日施行)。この制度により、警察などが反則行為の現場で反則者に告知する際には、いわゆる「青切符」が用いられる。
この制度の導入により、違反の軽重に応じた合理的な処理方法が採られ、処理の迅速化が実現した。この制度は1970年の道路交通法改正により、少年事件についても適用されることとなった(1970年8月20日施行)。
2009年(平成21)の道路交通違反取締り件数約835万件中、約785万件(94.1%)が交通反則通告制度によるものであり、このうち97.8%の反則行為について任意に反則金が納付された。納付金などが原資となり、道路交通法附則第16条第1項の規定により、「交通安全対策特別交付金」として、地方単独事業として行われる信号機などの道路交通安全施設の設置および管理のため、国から都道府県および市町村に対して交付される。交付金の配分額は、人口集中地区人口、交通事故発生件数および改良済道路延長により計算される。2009年の反則金納付総額は約739億円であった。
[阿久津正好・中村振一郎]
『道路交通法研究会編著『最新 注解道路交通法』全訂版(2010・立花書房)』▽『交通関係法令研究会編『交通小六法』(2010・大成出版社)』▽『『交通統計』各年版(交通事故総合分析センター)』
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…しかし,これは略式手続よりも手続が面倒なために1962年の約39万人を境にその後はしだいに利用されなくなり,最近では皆無に近い。
[交通切符,交通反則通告制度]
高度経済成長によって自動車の保有台数が増加し,それに伴って交通違反が激増した。これに対処するため,より簡略な処理方式として作られたのが,1963年のいわゆる〈交通切符〉制度と67年の〈交通反則通告制度〉である。…
※「交通反則通告制度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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