一般公衆の交通による危険を防止し、その安全と円滑を図ることを目的とした警察作用。陸上交通警察、海上警察、航空警察に分けられるが、一般には陸上交通警察のなかでもとくに道路交通警察をさしていう場合が多い。
(1)陸上交通警察とは、道路上の交通に関する警察であり、道路交通の取締りと陸上運送の取締りがある。道路交通警察については道路交通法(昭和35年法律105号)が基本となっており、道路交通の安全と円滑を図り、交通事故を防止することを目的としている。その活動の内容は、交通安全教育、自動車などの運転免許の管理、交通安全施設の整備、交通規制、道路交通法違反の取締り、交通事故処理などである。
第二次世界大戦後、自動車保有台数、運転免許保有者数の増加に伴い、交通事故も増加の一途をたどり、1970年(昭和45)には交通事故死者数1万6765人(受傷24時間以内死亡)、交通事故負傷者数98万1096人と史上最高を記録し、「交通戦争」ということばに象徴されるように大きな社会問題となった。そのため交通安全対策基本法(昭和45年法律110号)が制定され、交通安全対策が本格的に講じられるようになった。交通信号機・道路標識・標示などの交通安全施設の整備、効果的な道路交通法違反などの指導取締り活動、免許証の更新時講習などによる運転者教育の充実、春・秋の交通安全運動などによる国民の交通安全意識の高揚などの総合的な対策によって、84年の交通事故死者数は9262人と、70年に比べほぼ半減した。交通指導取締りには、都道府県警察の交通課、外勤課、交通機動隊などに所属する警察官が従事しているが、駐・停車違反については、71年に登場した交通巡視員も取締り活動を行っている。陸上運送の取締りについては、道路運送法(昭和26年法律183号)、道路運送車両法(昭和26年法律185号)などの事業法のなかに、それぞれ取締規定がある。
(2)海上警察には、水上警察と航海警察がある。水上警察とは、国内水路すなわち湖沼、河川および港湾に関する警察であり、港則法(昭和23年法律174号)、航路標識法(昭和24年法律99号)などの法律がある。航海警察とは、海上交通、船員、船舶に関する警察であり、船舶法(明治32年法律46号)、船員法(昭和22年法律100号)、海上衝突予防法(昭和52年法律62号)などの法律がある。
(3)航空警察とは、航空、航空機、乗員、飛行場などに関する警察であり、航空法(昭和27年法律231号)、航空機登録令(昭和28年政令296号)などの法令がある。
[折田康徳・佐藤英善]
交通の安全を維持するための警察をいう。一般に警察作用は,司法警察と行政警察とに分けられるが,交通警察は行政警察に属する。交通システムの秩序を維持するという交通警察の機能は,発達した社会であればあるほど重要性を加えてくる。
交通警察とは,広義においては,交通の秩序を維持することによって,交通の危険を防止し,交通の障害を除去するための行政作用をいい,交通路または交通具の種類によって,陸上交通警察,海上交通警察,航空交通警察に分けることができる。陸上交通警察はさらに鉄軌道交通警察,道路交通警察などに分けることができる。狭義においては,交通警察は,一般警察機関である警察庁や都道府県警察の所管する道路交通警察をいい,道路における危険を防止し,その他交通の安全と円滑を図り,および道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする一般警察作用である。このような交通警察の活動領域は,社会のあるゆる階層に属する人々に及び,さまざまな価値観や利害が混じり合いかつ対立する中で交通秩序を形成することが求められる。加えて交通警察活動は,交通ルールのシステムとそれに適応する文化がいまだ未成熟で現に形成されつつある過程での交通秩序維持活動であるだけに,他の警察活動に対していくつかの点で特異性を有し,自動車技術,道路技術,人間科学などの交通学的な科学的知識が要求されるなど,専門性の高い分野である。このような特質を有する交通警察の基本として,enforcement(強制作用),education(教育訓練,広報),environment(環境条件との調和)およびengineering(科学的思考技術)のいわゆる4Eの原則があげられる。
→警察
執筆者:原田 達夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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