人工言語(読み)じんこうげんご

世界大百科事典 第2版の解説

じんこうげんご【人工言語 artificial language】

各民族が伝統的に使用する既成言語(自然言語)に対し,新たな構想の下で人工的に創出される言語の総称。暗号術のような特殊な通信手段というよりも,思想や真理探究の方法にまで深くかかわった一種の文化改革であり,17世紀ヨーロッパにおいて本格的にその創造が開始された。この時期に人工言語が注目を浴びた背景には,(1)政治・宗教を巡る各国の抗争により,共通語として存続しえなくなったラテン語に代わる〈国際語universal language〉の必要性と,(2)あいまい性や非論理性を一掃しえない自然言語に代わり,哲学や科学の発展に寄与しうる論理的で精密な〈哲学的言語philosophical language〉の確立が叫ばれるに至った,ヨーロッパ文化全般の自閉的状況がある。

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大辞林 第三版の解説

じんこうげんご【人工言語】

国際共通語を目ざして人為的に作られた言語。エスペラントなど。
言語規則が人為的に明確に規定されている言語。コンピューターのプログラム言語や記号論理学の言語など。 ⇔ 自然言語

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

人工言語
じんこうげんご
artificial language

日本語や英語のように、自然に発生し、昔から話され使われてきたことばを「自然言語」といい、これに対し、特定の個人ないしグループが意識的につくったことばを「人工言語」という。エスペラントのように国際語であることを目ざしてつくられたことばは人工言語の例になるが、このようなことばはほかにも何種類もある。また、論理記号の体系も、かなり昔から構想され、19世紀末から20世紀にかけて実現した人工言語の例である。さらに最近では、コンピュータを操作するためのさまざまな機械語、プログラミング用高級言語が開発されているが、これも人工言語の例になる。
 哲学的には、「自然言語に即して問題の記述、分析を行うと議論が不正確になるので、哲学用に人工言語をつくらなくてはならない」と主張する哲学者がいて、彼らは人工言語学派に属するといわれる。ライプニッツにすでにこの主張に類する考え方があるが、ラッセルが、論理記号の体系をこの哲学用の人工言語だとして、この主張を熱心に唱えたので有名である。なかには、現実にはまだできあがっていない、理想のなかの人工言語を想定して議論を行う哲学者もいる。1930年代の論理実証主義者によるやや性急な人工言語の取り込みを批判して、50年代以降、自然言語による記述だけを用いようとする日常言語学派が、イギリスやアメリカにおこった。しかし数学や科学などで新しくつくった記号を多く用いるのは、人工言語を用いないと話が通じにくい局面があるという事実を、少なくとも部分的に裏書きしているといえよう。[吉田夏彦]

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精選版 日本国語大辞典の解説

じんこう‐げんご【人工言語】

〘名〙 人間がある目的のために作り上げた言語。
(イ) 自然に発生した言語に対して、国際共通語を目ざして意図的に作られた言語。エスペラントの類。国際語。国際補助語
(ロ) コンピュータ用のプログラムを作成するための言語。

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世界大百科事典内の人工言語の言及

【イェスペルセン】より

…彼は記述主導型の伝統的言語学から,理論主導型の新言語学へと移る過渡期の橋渡しをした学者で,その理論は特に《統語論――理論と分析Analytic Syntax》(1937)で展開されている。なお,1928年にはノビアルNovialと呼ぶ人工言語を考案し,新しい国際語(国際共通語)として提唱している。【三宅 鴻】。…

【プログラミング言語】より

…プログラミング言語とは,プログラムを記述するための言語である。より厳密には,人間がコンピューターに情報を伝えること,および伝える内容を記録したり人間が検討することを目的として設計した人工言語をコンピューター言語と呼び,その中でもプログラムを記述することを目的とする言語をプログラミング言語と呼ぶ。プログラミング言語の構文は形式言語に基づいて定義されることが多い。…

【論理学】より

…それゆえ,論理学を構築する手がかりとして日本語を選ぼうと,ギリシア語を選ぼうと,あるいは数学の言語を選ぼうと,結果はすべて同じことになる。そこで論理学者は,論理構造の最も読みとりやすい一種の人工言語を考案し,この人工言語の特性を調べる,という方法を採用する。もちろんそこでは,人間の知識がこの人工言語で完全に表現されるにちがいない,ということが前提されているのである。…

※「人工言語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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