人形峠(読み)ニンギョウトウゲ

デジタル大辞泉 「人形峠」の意味・読み・例文・類語

にんぎょう‐とうげ〔ニンギヤウたうげ〕【人形峠】

鳥取三朝みささ町と岡山県鏡野町の境の峠。標高739メートル。昭和30年(1955)に付近でウラン鉱が発見された。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「人形峠」の意味・読み・例文・類語

にんぎょう‐とうげニンギャウたうげ【人形峠】

  1. [ 1 ] 鳥取県三朝(みささ)町と岡山県鏡野町との境にある峠。昭和三〇年(一九五五)ウラン鉱床が発見された。標高七三九メートル。
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 [ 一 ]にまつわる地名伝説。むかし大きな蜂がいて旅人を悩ませたが、異僧が人形を立てさせると蜂が死んだので、その人形を蜂とともに埋めたという。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「人形峠」の意味・わかりやすい解説

人形峠 (にんぎょうとうげ)

岡山県苫田(とまた)郡鏡野町上斎原と鳥取県東伯郡三朝(みささ)町の境界にある峠。標高739m。中国山地の分水界をなす。地名は付近の人形仙(1004m)に由来する。かつての倉吉往来は人形仙の東側を通っていたが,1904年に現在の峠を通る国道179号線のルートに変更された。峠付近にはスキー場やキャンプ場のある高清水高原,恩原高原がある。1955年に通産省地質調査所の調査により峠付近でウラン鉱床が発見され,日本に存在するウラン鉱としては大量かつ高品位であるため,56年設立の原子燃料公社が59年から本格的調査・開発に入り,67年設立の動力炉・核燃料開発事業団がそれを継承した。70年には日本独自の技術開発による一貫精錬の操業が開始され,79年には大規模な濃縮ウランパイロットプラントが完成した(2001年プラントは操業停止)。
執筆者:

山陰型の花コウ岩類を基盤とし,これを不整合におおう中新統ないし鮮新統の堆積岩中のレキ岩・砂岩(鮮新世の人形峠層)に含まれるウラン鉱床を採掘対象としている。陸成の堆積層で,人形石を主とする富鉱部はかつての河川に関係しているらしく,チャンネル状をなし,U3O80.5%程度の品位を示すが,その範囲はごく狭い範囲に限られている。そのほかにリン灰ウラン石などのウラン鉱物も産するが,埋蔵量500万t(U3O80.051%)程度で,経済的な稼行はむずかしい。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「人形峠」の意味・わかりやすい解説

人形峠
にんぎょうとうげ

鳥取県東伯(とうはく)郡三朝(みささ)町と岡山県苫田(とまた)郡鏡野(かがみの)町の県境にある峠。標高739メートル。日本最初の堆積(たいせき)型ウラン鉱床が発見されたことで知られる。鏡野町に日本原子力研究開発機構の人形峠環境技術センターがある。鉱床は基盤の花崗(かこう)岩山地の侵食凹地に堆積した新第三紀砂礫(されき)岩層中に胚胎(はいたい)し、火山岩類で覆われている。推定埋蔵量は約374万トンで東濃鉱山に次ぎ日本第2位。1964年(昭和39)原鉱石の試験製錬を始め、1982年には遠心分離法によるウラン濃縮パイロット・プラントの全面運転を開始、日本の核燃料サイクルの製錬、転換、濃縮部門の技術開発センターとなった。2001年(平成13)にウラン濃縮プラントは運転を終了している。峠の西方、旧峠下の標高610メートルの地を国道179号が人形トンネルによって越えている。

 なお、峠には大きなクモがいて山越えをする人々を襲った、また、ある男が藁(わら)人形でクモをおびき出して退治したという伝説がある。

[岩永 實]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「人形峠」の意味・わかりやすい解説

人形峠【にんぎょうとうげ】

鳥取・岡山県境の中部,中国山地にある峠。標高739m。国道179号線が通じる。1955年付近一帯の第三紀層基底部の人形峠層中に優秀なウラン鉱床が発見された。堆積性鉱床で,不整合の凹所にあり,ウラン鉱物は人形石,センウラン鉱,リン灰ウラン鉱,カルノー石など。1956年原子燃料公社(現動力炉・核燃料開発事業団)が開発,1965年試験製錬を開始。埋蔵量は推定約500万t。1970年から試験製錬所でウラン精鉱を生産,また中津川南部鉱床から採掘した合計1.6万tのウラン鉱石を東海事業所に送って40tのイエローケーキを生産した。この間に日本独自のウラン製錬法が開発され,人形峠は当初の単なるウラン原料鉱山から,日本の核燃料サイクルの総合開発センターへと脱皮した。
→関連項目ウラン三朝[町]

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「人形峠」の意味・わかりやすい解説

人形峠
にんぎょうとうげ

鳥取県三朝町と岡山県鏡野町との境にある峠。昔,旅人を悩ませた大グモを人形でおびき寄せて退治したという伝説が地名の由来。峠付近には日本で最初に発見されたウラン鉱床があり,1955年動力炉・核燃料開発事業団による人形峠鉱業所が設けられた。北方に景勝地高清水高原がある。峠下の人形トンネルを国道 179号線が通じ,倉吉市と津山市をつなぐ重要な山陰山陽連絡のルートとなっている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の人形峠の言及

【鳥取[県]】より

…日南町多里のクロム鉄鉱山は,1900年ころ発見された日本の代表的なクロム鉄鉱床である。ウラン鉱は55年に岡山県境の人形峠付近で発見され,峠の岡山県側で粗製錬工場が操業している。 鳥取県の製造品出荷額は全国出荷額の0.4%にすぎず,47都道府県中44位である(1995)。…

※「人形峠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android