岡山県苫田(とまた)郡鏡野町上斎原と鳥取県東伯郡三朝(みささ)町の境界にある峠。標高739m。中国山地の分水界をなす。地名は付近の人形仙(1004m)に由来する。かつての倉吉往来は人形仙の東側を通っていたが,1904年に現在の峠を通る国道179号線のルートに変更された。峠付近にはスキー場やキャンプ場のある高清水高原,恩原高原がある。1955年に通産省地質調査所の調査により峠付近でウラン鉱床が発見され,日本に存在するウラン鉱としては大量かつ高品位であるため,56年設立の原子燃料公社が59年から本格的調査・開発に入り,67年設立の動力炉・核燃料開発事業団がそれを継承した。70年には日本独自の技術開発による一貫精錬の操業が開始され,79年には大規模な濃縮ウランのパイロットプラントが完成した(2001年プラントは操業停止)。
執筆者:由比浜 省吾
山陰型の花コウ岩類を基盤とし,これを不整合におおう中新統ないし鮮新統の堆積岩中のレキ岩・砂岩(鮮新世の人形峠層)に含まれるウラン鉱床を採掘対象としている。陸成の堆積層で,人形石を主とする富鉱部はかつての河川に関係しているらしく,チャンネル状をなし,U3O80.5%程度の品位を示すが,その範囲はごく狭い範囲に限られている。そのほかにリン灰ウラン石などのウラン鉱物も産するが,埋蔵量500万t(U3O80.051%)程度で,経済的な稼行はむずかしい。
執筆者:山口 梅太郎
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鳥取県東伯(とうはく)郡三朝(みささ)町と岡山県苫田(とまた)郡鏡野(かがみの)町の県境にある峠。標高739メートル。日本最初の堆積(たいせき)型ウラン鉱床が発見されたことで知られる。鏡野町に日本原子力研究開発機構の人形峠環境技術センターがある。鉱床は基盤の花崗(かこう)岩山地の侵食凹地に堆積した新第三紀砂礫(されき)岩層中に胚胎(はいたい)し、火山岩類で覆われている。推定埋蔵量は約374万トンで東濃鉱山に次ぎ日本第2位。1964年(昭和39)原鉱石の試験製錬を始め、1982年には遠心分離法によるウラン濃縮パイロット・プラントの全面運転を開始、日本の核燃料サイクルの製錬、転換、濃縮部門の技術開発センターとなった。2001年(平成13)にウラン濃縮プラントは運転を終了している。峠の西方、旧峠下の標高610メートルの地を国道179号が人形トンネルによって越えている。
なお、峠には大きなクモがいて山越えをする人々を襲った、また、ある男が藁(わら)人形でクモをおびき出して退治したという伝説がある。
[岩永 實]
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…日南町多里のクロム鉄鉱山は,1900年ころ発見された日本の代表的なクロム鉄鉱床である。ウラン鉱は55年に岡山県境の人形峠付近で発見され,峠の岡山県側で粗製錬工場が操業している。 鳥取県の製造品出荷額は全国出荷額の0.4%にすぎず,47都道府県中44位である(1995)。…
※「人形峠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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