望郷(読み)ボウキョウ

デジタル大辞泉 「望郷」の意味・読み・例文・類語

ぼう‐きょう〔バウキヤウ〕【望郷】

故郷をなつかしく思いやること。懐郷思郷。「望郷の念にかられる」
[補説]作品名別項。→望郷
[類語]追憶懐旧懐古懐かしむ追想回想回顧記憶追懐懐郷顧みる振り返る思い返す偲ぶノスタルジックノスタルジア郷愁郷夢愛郷

ぼうきょう【望郷】[書名・映画・絵画]

池谷信三郎の小説。大正14年(1925)発表。自身のドイツ留学の体験を描き、「時事新報」の懸賞小説に当選、同紙に連載される。
《〈フランス〉Pépé le Moko》フランス映画。ジュリアン=デュビビエ監督による1937年公開の白黒作品。アルジェカスバを舞台に、ジャンギャバン演じる悪党ペペ=ル=モコが、故郷フランスを思い起こさせる女性ギャビーに惹かれ、破滅していく姿を描く。
東郷青児による油絵。古代遺跡風の建造物を背景に、目を伏せスカーフをまいた少女が風に吹かれて立つ姿を、グレーを基調として描いたもの。昭和34年(1959)の作品。第5回日本国際美術展に出品し、大衆賞を受賞。東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館蔵。ノスタルジア。
三浦朱門の小説。昭和62年(1987)刊行

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精選版 日本国語大辞典 「望郷」の意味・読み・例文・類語

ぼう‐きょうバウキャウ【望郷】

  1. 〘 名詞 〙 故郷を慕い、遠く思いをはせること。故郷をなつかしく思うこと。懐郷。思郷。
    1. [初出の実例]「帰京の期をしらず。さだめて亡郷の鬼とぞならんずらん」(出典:保元物語(1220頃か)下)
    2. [その他の文献]〔岑文本‐冬日宴于庶子宅詩〕

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改訂新版 世界大百科事典 「望郷」の意味・わかりやすい解説

望郷 (ぼうきょう)
Pépé le Moko

フランス映画。1937年製作。《地の果てを行く》(1935),《我等の仲間》(1936)につづくジュリアンデュビビエ監督作品。パリ警察の元警部の小説をもとにしてアンリ・ジャンソンが脚本を書き,ジャン・ギャバンが主演したデュビビエの代表作の一つ。日本ではとくに人気の高い作品である。

 パリからアルジェリアのカスバに逃げ込んだギャング,ペペ・ル・モコが,美しいパリ女に出会って望郷の思いに耐えきれず,捕らえられてみずから命を絶つ物語で,当時,スリラーを詩の水準まで引きあげた〈詩的リアリズム〉の作品と評価された。しかし,アルジェリア独立運動が重要問題化したのちは,思想的バックボーンを欠いた商業作家の通俗メロドラマとする批判も出された。ハワード・ホークス監督のギャングスター映画《暗黒街の顔役》(1930)の影響が指摘される一方,逆にこの映画もジョン・クロムウェル監督のロマンティック・スリラー《アルジェ》(1938),ジョン・ベリー監督のセミ・ミュージカル《迷路》(原題《カスバ》)(1948)と2度リメークされている。
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普及版 字通 「望郷」の読み・字形・画数・意味

【望郷】ぼうきよう(ばうきやう)

故郷を懐しみ望む。唐・王勃〔蜀中九日〕詩 九九日、臺 他席他に、客をる杯

字通「望」の項目を見る

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デジタル大辞泉プラス 「望郷」の解説

望郷〔映画〕

1993年公開の日本映画。監督:斎藤耕一、原作:窪田操、脚本:松山善三、美術:間野重雄。出演:秋月健太郎、田中健、竹下景子、細川直美、小松方正、長倉大介、可愛かずみほか。第48回毎日映画コンクール脚本賞、美術賞、男優助演賞(田中健)受賞。

望郷〔曲名〕

日本のポピュラー音楽。歌は男性演歌歌手、森進一。1970年発売。作詞:橋本淳、作曲:猪俣公章

望郷〔小説〕

北方謙三の長編ハードボイルド小説。1990年刊行。老犬シリーズの第3作・完結編。

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世界大百科事典(旧版)内の望郷の言及

【カスバ】より

… 現在では都市の城壁は大半が取りこわされたが,城砦の部分や旧市街はかなり保存されており,チュニスでは官庁街,ラバトやアルジェでは半ばスラム化した住宅街になっている。アルジェのカスバは,映画《望郷》に示されたように,ヨーロッパ人の目からみると犯罪者の巣窟であり,また異国趣味を満足させる観光の対象である。だがアルジェリア人にとっては映画《アルジェの戦い》に示されたように民族運動の拠点になった町であり,またイスラム都市の原型が残された心のふるさとである。…

【ギャバン】より

…フォーリー・ベルジェールのダンサーとなり,ミュージック・ホールやオペレッタに出演したのち,しばらくムーラン・ルージュでミスタンゲットの相手役をつとめる。1930年,映画にデビューし,G.W.パプストの《上から下まで》(1933),ジュリアン・デュビビエの《白き処女地》(1934)で頭角をあらわし,続くデュビビエの《地の果てを行く》(1935),《我等の仲間》《望郷》(ともに1936),ジャン・ルノアールの《どん底》(1936),《大いなる幻影》(1937),マルセル・カルネの《霧の波止場》(1938)など30年代フランス映画の代表的な作品で多彩なヒーロー,あるいはアンチヒーローを演じた。〈ハンサム型〉ではない〈男性的な〉スターとして国際的な人気をよぶ。…

※「望郷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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