フランスの劇作家モリエール作の性格喜劇。5幕韻文。初演1666年。《ミザントロープ》ともいう。17世紀フランス古典劇理論に合致した傑作。全体の均衡を整え,筆を抑えながら,上流貴族社交界の風俗を,陰影に富み洗練された会話で綴り描いてゆく作者の手腕はみごとというほかはない。巧言令色の支配する社交界に憤激して人間嫌いになる正義漢アルセストに,社交界の典型的紳士フィラント,虚栄の泡から生まれた美女セリメーヌと貞淑なエリアント,そしてこの4人の周囲を彩るこっけいな小侯爵たち。作者は当初,社交サロンの風俗をギャラントリーやプレシオジテの面から取り上げる予定でいたが,途中から,《タルチュフ》《ドン・ジュアン》に続く偽善者告発の舞台に変え,3年の歳月をかけて完成したといわれる。作品は,登場人物の深い人間性,人生観の対立から生ずる緊張感などで,きわめて優れた心理劇になっている。初演ではモリエール自身アルセストを演じた。
執筆者:鈴木 康司
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フランスの劇作家モリエールの戯曲。五幕韻文喜劇。1666年初演。『ミザントロープ』『孤客』『怒りっぽい恋人』などとも訳される。直情径行のアルセストは若い未亡人セリメーヌを愛しているが、コケットな彼女は周囲に愛嬌(あいきょう)を振りまくばかりでなかなか本心を明かそうとしない。才気煥発(かんぱつ)の彼女は巧みな会話でサロンの客たちを喜ばせ、アルセストの憤懣(ふんまん)を募らせる。アルセストは係争中の訴訟に敗れ、理の通らない世間に絶望感を抱く。セリメーヌはほうぼうに送った恋文を同時に突きつけられ窮地に陥る。アルセストは俗界を離れて2人で暮らそうと真率に彼女を誘うが、セリメーヌには社交なしの生活は考えられない。両者は平行線をたどるばかりである。2人の周囲にうぬぼれの強い詩人、軽薄な侯爵たち、信心を装う女性らを配し、戯曲は上流社会の戯画を示している。フランス古典喜劇中きわめて完成度の高い作と目される。
[井村順一]
『辰野隆訳『孤客(ミザントロオプ)』(岩波文庫)』
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