戦国大名今川氏の制定した分国法。守護から戦国大名への脱皮に成功した今川氏親が1526年(大永6)制定した《仮名目録》と,氏親の子義元が53年(天文22)制定した《仮名目録追加》から成る。条数は前者は33ヵ条(今川記本)と31ヵ条(黒川本)のものが伝存するが,後者は21ヵ条から成る。仮名目録は,東国最古の分国法であり,隣国の武田氏の分国法《甲州法度之次第》がこれを参考にしてつくられたことからもその影響力が大きかったことが知られる。その立法目的は,戦国時代という大きな時代の転換のなかで,分国の新しい裁判基準を設定するためであることが明記されている。またこの法典には,それまでの守護今川氏の発布した個別法令,御成敗式目の条文,さらには中世社会の慣習法などが取捨選択されて採用されており,この法典は,領国内における最高の効力をもつ基本法典として制定されたことが知られる。このような基本法の制定の目的と,追加第20条の〈大名の力で法を制定し領国が治まっている〉という戦国大名を特徴づける主権意識とは深い関係があったといえる。またこの法典の条項の具体的適用例や追加による改変も知られ,この法典が現実に密着した生きた法典として機能したことがうかがえる点でも貴重である。
その内容は,検地,境相論,知行地売却,債権債務,相続,不入地など多岐にわたるが,一般的傾向としては,領国統治法としての性格より,家臣統制法の性格が強いといえる。これらの統制法では,相続などすべての分野において厳しい大名の統制が打ち出されているが,それを象徴するのが第8条の喧嘩両成敗法である。この両成敗法は,一揆契約状を除けば最も古く,家臣のあらゆる自力救済行為を禁じ,その紛争を今川氏の裁判権にゆだねることを強制したもので,その制定は,法史上画期的なものとされている。
→分国法
執筆者:勝俣 鎮夫
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戦国大名今川氏の領国支配の基本法典。1526年(大永6)氏親(うじちか)制定の33条と、その子義元(よしもと)が1553年(天文22)に制定した追加21条をあわせていう。前者は、地頭(領主)と本・新名主(みょうしゅ)(百姓)の関係、境界相論、喧嘩(けんか)・盗賊の取締、所領売買制限、借米銭の利子率、宗論・私婚の禁止などを規定。後者は、家臣の被官関係、不入権、相続および裁判手続などを規定しているが、条文中とくにこの制法が室町幕府権力を背景とせず、今川氏自身の力量による制定・発効を強調し明示している点が注目される。なお本法典は武田氏の甲州法度(はっと)にも影響を与えた。写本は今川記本と黒川本が伝来。黒川本には義元制定という13条の訴訟条目が付されている。『続群書類従』、『中世法制史料集』(第3巻)所収。
[久保田昌希]
東海地方の戦国大名今川氏が制定した分国法。1526年(大永6)に今川氏親(うじちか)が制定した33カ条の「仮名目録」と,その子義元が53年(天文22)に制定した21カ条の「仮名目録追加」とからなる。分国の新しい裁判基準の設定という明確な目的意識で編纂され,それまで機能していた今川氏の個別法令や慣習法,「御成敗式目」の規定などを取捨して社会の実情にあった規範の制定をめざした。内容は堺相論・売買・貸借・相続・検地など多岐にわたるが,いずれの分野でも大名による統制を強くうちだし,一切の私闘を禁じた喧嘩両成敗法の条項もみられる。東国の分国法としては最も初期に属し,武田氏の「甲州法度之次第」などにも大きな影響を与えた。「日本思想大系」所収。
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…その後14年には引馬(ひくま)城に斯波義達を破って尾張に放逐し,遠江を完全に掌握した。内政面では,20年,24年(大永4)遠江で検地を実施し,死の直前26年には本格的な分国法《今川仮名目録》を制定するなど,領国支配の安定化と家臣団の統制に努め,駿遠両国の戦国大名へと今川氏が発展する基礎を築いた。晩年には中風を患って病死。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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