仕事着(読み)シゴトギ

デジタル大辞泉 「仕事着」の意味・読み・例文・類語

しごと‐ぎ【仕事着】

仕事の能率を上げ、汚れや危険を防ぐために着る衣服。働き着。作業服

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精選版 日本国語大辞典 「仕事着」の意味・読み・例文・類語

しごと‐ぎ【仕事着】

  1. 〘 名詞 〙 仕事をするときに着る衣服。作業衣。
    1. [初出の実例]「廉価の粗服を買ふて仕事着と為さんことこそ望ましけれ」(出典:経済小学家政要旨(1876)〈永峰秀樹訳〉四)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「仕事着」の意味・わかりやすい解説

仕事着
しごとぎ

仕事をするときに着る衣服のこと。労働服、職業服や農民、漁民、職人、商人が働き着として着る衣服をさす。在来型のものは野良着(のらぎ)、田んぼ着、山着(やまぎ)、働き襦袢(じゅばん)、かせぎぎもん、でたち(仕事に出かける意味)など、地方によって異なった名称でよばれている。仕事着の付属的なものとしては前掛け、手甲(てっこう)、脚絆(きゃはん)、襷(たすき)、被(かぶ)り物などがある。近代化の流れとともに洋風の作業服に変わってきたが、昭和の初めまで、地域によっては第二次世界大戦ごろまで、在来型の仕事着が一般的であった。

 仕事着は仕事の軽重、労働内容に適したものを用いるが、(1)着やすく、機能的、(2)外部の危険から身を守る、(3)衣服そのものが災害を招かない、(4)体温調節を助け、快適な衣服である、(5)耐久性があり、染色も堅牢(けんろう)である、(6)汚れにくく、洗濯しやすい、(7)仕立てや手入れが簡単、などといったものが望ましい。

[岡野和子]

在来型の仕事着

南北に長い日本では、気候や風土によって仕事着の形態、構成が異なる。一般に東北日本は二部式構成で、上衣は衽(おくみ)なしの腰までの丈の襦袢型で、両脇(わき)に馬乗りがあいている。袖(そで)の形は腕の運動に支障のない筒袖、鉄砲袖、もじり袖などである。下衣には袴(はかま)、軽衫(かるさん)、裁着(たっつけ)、ももひきもんぺなどを用いる。南西日本は一部式構成で、腰巻をつけ、短めの丈の着物に細紐(ほそひも)、細帯を締めた。防寒用には袖なし胴着を着る。農村では仕事着が一日中着用され、仕立ておろしや、こざっぱりしたものを晴れ着とすることもあった。

 仕事着の材料としては麻、木綿のほか、苧麻(ちょま)、楮(こうぞ)、藤(ふじ)、科(しな)(シナノキ)、葛(かずら)(つる草類)などが用いられた。福島以北ではワタが生育せず、保温性のある木綿は貴重品として、明治に至るまで取り替え木綿に依存した。そのほか動物の毛皮として、シカ、クマ、イノシシなども利用された。染色は堅牢で洗うごとに美しさを増す藍(あい)染めがほとんどで、各地の紺屋(こうや)で染められた。無地、縞物(しまもの)が用いられ、古くから手紡ぎや機(はた)織りは女の手仕事であり、商品化されるまで自給自足でまかなった。縫製、手入れも女の仕事である。傷みやすい肩、肘(ひじ)、腰の部分には当て布をし、傷んだところは切り取って別布をはいで繕った。補強のために木綿糸で刺し縫いをしたが、東北地方では、これに装飾性が加味されて菱(ひし)刺し、こぎん刺しなどを生んだ。ぼろ布を細く裂いて緯糸(よこいと)として織った裂織(さきおり)は、防寒用の仕事着、帯などに利用された。

 働く人の仕事着を現存する絵画でみると、平安時代後期の『扇面法華経冊子』では下女が手なし衣または小袖に細帯を締め、三幅(みの)前垂れをしている。『石山寺縁起絵巻』に描かれた大工は筒袖の襦袢型の上着に、丈の短い小袴をはいている。室町時代の『七十一番職人歌合(うたあわせ)』は、142種の職業人の仕事着をみることができるが、男は直垂(ひたたれ)姿が多く、筒袖袴、小袖袴もある。袴は四幅(よの)袴で足首をくくったものが多い。物売り女は短い小袖に細帯を締めており、桂(かつら)巻きをしている者もいる。室町時代の『職人尽絵(しょくにんづくしえ)』(川越市喜多院(きたいん)蔵)では袴姿がなくなり、小袖に帯を締めて、脛巾(はばき)をつけた姿が多くなっている。近世初頭の名古屋城上段の間付書院(つけしょいん)の屋根を葺(ふ)いている人は、筒袖の短い丈の着物である。江戸時代の『職人尽絵』には大工の腹掛け姿がみられるが、中期以降、印半纏(しるしばんてん)、腹掛け、ももひきが職人の服装としてしだいに定着してきた。腹掛けの前・脇についている袋には、釘(くぎ)その他の道具類が収められ、これを丼(どんぶり)ともいった。この仕事着は明治・大正から昭和の初めまで続いたが、現在では鳶職(とびしょく)、植木職などの一部の人たちに用いられているにすぎない。商人の仕事着としては、印半纏のほか縞木綿、角帯、前垂れが、洋風化するまで用いられた。

[岡野和子]

ワーキング・ウエア

洋風の仕事着をワーキングウエアworking wearという。以前は、重作業の肉体労働や工場労働の労働服、作業服をさしていたが、近来は広く職業用の衣服全般を意味するようになった。野良着(のらぎ)や作業衣はもとより、俳優や音楽家が着る舞台衣装や、家事労働を行う主婦のハウスドレスなど、仕事の場で着る服はすべて仕事着である。制服や軍服なども含めて、宇宙服から潜水服に至るまで仕事着の部類は多岐にわたり、仕事の種類によってさまざまのスタイルがあるが、それぞれの機能にあったデザインで、しかも仕事の性格を表現したものが多い。

〔1〕オーバーオールズ 胸当て付きのゆったりとした作業ズボン。尾錠(びじょう)あるいはボタン留めの吊(つ)り紐(ひも)、要所に機能的なポケットがついている。もともと普通のズボンの上からはいていた。フランス語のサロペットにあたる。オーバーオールは上っ張り

〔2〕カバーロール(ズ) 機械工、修理工などが服の上から重ねて着る、上着とズボンが一続きになった作業衣。フランス語のコンビネゾンにあたり、日本では俗に「つなぎ」という。

〔3〕ジーンズ 堅牢(けんろう)な細綾(あや)織の綿布(ジーン)でつくったズボンや作業衣。アメリカの牧童や農夫の典型的な作業衣であったものが、いまでは仕事着、日常着、遊び着として世界的に愛好されている。ブルー・ジーン(ズ)ともよばれ、日本ではこのズボンを俗にジーパンとよぶ。漂白したものや刺しゅう入り、パイピング入りが一時流行した。ソフト感覚のスリムなものは夜も着用される。

〔4〕チーノーズ 軍服用の厚地の綾織の綿布(チーノー)でつくられたじょうぶなズボン。カーキ色やベージュ色。GIの制服からきた。

〔5〕ジャンパー 作業用のゆったりしたジャケット。ブラウス、セーター、シャツなどの上から着る。裾(すそ)と袖口(そでぐち)はカフスやベルトやニット地などをつけて密着させ、機能性に富み作業しやすいようにくふうされている。防寒、防水のものもあり、前あき型(ファスナーかボタン留め)とプルオーバー型がある。

〔6〕スモック 衣服の汚れを防ぐのに着る緩やかな上っ張り。画家、職人、事務員が服の上から着る。スモック・フロックは野良着。

〔7〕エプロン 衣服の汚れを防ぎ保護するために、衣服の上につける前掛けや上っ張り。フランス語のタブリエにあたる。胸当て付き、袖付きのもの、またはオーバースカート型、ジャンパースカート型、スモック型などがある。

〔8〕モーニング・ウエア 主婦が午前中の家事を行う際に着用する働き着。いわゆる家庭着で、ハウスドレス、ホームドレスともよばれる。

〔9〕オフィス・ウエア オフィスで着用する事務服。従来はスモックのような上っ張り型が多く、制服的な意味もあったが、シャツ形式のジャケットやジャンパー、女子では、共のスカートと組み合わせたスーツ形式やアンサンブル形式が増えている。今日では、いわゆる背広が典型的な男子のオフィス・ウエアとなっている。

〔10〕白衣 医療、保健衛生、環境衛生に携わる職業者が着る白地の外衣。医師の診察服・手術衣、看護師の看護服、科学者の実験衣、理髪師・美容師・調理人の仕事着など。清潔を第一とするので白地でつくるのが普通であるが、淡色の布地を用いるものもある。

 ワーキング・ウエアは、子供服をはじめ日常着、遊び着、スポーツ着などにしばしば重要な影響を及ぼし、近年はワーキング・ウエア・ルックが一つのブームとさえなっている。これは、仕事着の機能性からヒントを得て、仕事着そのものやそのデザインを部分的に取り入れたものである。1960年以来のジーンズ・ルックをはじめ、航空服から生まれたジャンプスーツ・ルック、またはファティーグ・ルック(雑役兵の作業衣からヒントを得たカバー・コート、アウター・ジャケット、ワーク・パンツなど)、スペース・ルック(ピエール・カルダンの宇宙服コスモコールに始まり、映画『スター・ウォーズ』の影響もある)などに代表される。またワーキング・ウエアそのものは、従来の実用第一主義から脱して、それぞれの職場の環境に応じた色彩調整などが考慮され、より快適な、より能率的な、より軽快なものに向かっている。

[平野裕子]


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改訂新版 世界大百科事典 「仕事着」の意味・わかりやすい解説

仕事着 (しごとぎ)

仕事に従事するとき着用する衣服。作業時における不測の災害を防ぎ,寒暑,風雨,塵埃(じんあい)などから体を保護し,また活動を容易にして作業能率を高めるなどのために用いる。日本在来の仕事着は働き着,労働着,野良着(のらぎ)などと呼ばれ伝統的な和服式であった。形も上衣と下衣に分かれた二部式が多く,それぞれの仕事の内容に適するよう独特の着方があり,一見してその職業を知ることができた。しかし明治以降の洋服導入とともに大正時代ころから仕事着全般も洋風化した。現在では作業服,作業衣,事務服,各種職能服,制服などとなり,日常着,晴着などと形のうえでは変わらないものが多くなった。

農業・山林業に従事する男女の仕事着は,一般的に野良着と呼ばれていた。地域による独特の伝統的な形は,その地域の農業に適する機能性と経済性,美しさをもつものであった。材料は古くから麻が用いられたが,その他クズ,フジ,シナ,ゼンマイなどの野生の植物繊維も用いた。木綿が一般化したのは明治以降であるが,主として紺木綿,黒木綿,縞木綿が使われ,絣木綿が広く普及したのは第2次世界大戦後であった。昔から農家の衣料調達は主婦の苦心するところであり,麻を植え,糸を引き,機を織った自給衣料は極限まで利用された。長持ちさせるために,刺し縫いをし,あるいは身ごろの上下,たてよこに別布を接ぎ合わせるなどした。対馬のハギトウジンは前後身ごろに,合わせて30枚もの色,柄とりどりの布を巧みに接ぎ合わせてつくってある。また,悪くなった衣服の良い部分を裂いて織る裂織(さきおり)など,衣料の経済性が重視されたが,それらはやがて独特の刺子(さしこ)や,接ぎ合せによる美を生み出している。青森の津軽こぎんは著名である。野良着の形は和服様式であるが,昭和初期ころまでは明らかに地域性がみられ,関東から北陸,東北地方では男女ともに上下二部式のツーピース型が多かった。上半衣は半じゅばん形式で,腰までの長さ,袖は筒袖,半袖,鉄砲袖が多く,野良着の名称はそれらをとり,コシキリ,ハンキレ,ハンソデ,ノラジュバンなどといった。袖の構造は非常に機能的で,袖下に三角あるいは長三角形の襠(まち)が挿入されていた。下半衣は男子はモモヒキ,タチツケ,サルッパカマを着用した。女性も水田作業には男子同様の下半衣を用いている。被り物(かぶりもの)は,手ぬぐいで男子は頰かぶりが多く,女性は姉さんかぶりをした。関東では2本用いた。東北ではふろしき,ボッチ,覆面など特殊な被り物が多く,農作業用と防寒を兼ねて用いられた。このほか菅笠(すげがさ),藺笠(いがさ)もかぶった。前掛けは,一幅,一幅半,二幅ものが多く,また胸あてつき前掛けは汚れ作業に用いた。手をおおうコテ,手甲(てつこう),あるいは足を保護する脚絆はばき(脛巾),アクトかけ,履物としては足半(あしなか),わらじ,わらぐつなどをはいた。

 一方,関東以西では,上下一部式ともいうべき長着の着流しが多く,男子は裾を腰部の帯にからげて着用し,下半衣は股引(ももひき)をはいた。女性も,長着を短く端折って着用し,下に腰巻をつけ,この上に前掛けを締めるというのが一般的な姿であった。前掛けは一幅ものが主であったが,三幅,四幅も地域によってみられ腰巻の代用ともなった。足部は脚絆,手は手甲を用いる。被り物は大半が手ぬぐいで姉さんかぶりであった。男子は頰かぶり,向こう鉢巻をした。第2次世界大戦中には上下二部式標準服の制定により,全国の女性は半ば強制的に下半衣にもんぺを着用させられた。戦後,もんぺはその機能性から農作業着として全国に定着し,とくに関東以西で愛用され今日にいたっている。しかし,戦後の農村社会あるいは農業技術の変化,とくに1955年以降の高度経済成長によって,農家生活は急速に変化した。衣生活も同様で,在来の野良着は二,三を除いてほとんど廃れ,今日では男女を問わず既製農作業着が着用されている。

従来,大工,左官,石工,鳶(とび)職,屋根職,畳職などに従事する人人を職人と呼んでいた。近世の職人の仕事着は上下二部式で構成されていた。上衣は印袢纏(しるしばんてん)に腹掛け,下衣は股引,脚絆,足袋,草履が一般的な服装であった。材料は紺木綿が多く印袢纏の背中は白地で大きく出入店の屋号が染め抜いてあった。これらの仕事着は今なお一部に残存しているが,しかし大半は洋風の作業服となり,上衣には作業服,ジャンパー,下衣は作業ズボン,ニッカーボッカーズ,靴を用いるなど大きく変化している。
山袴
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