日本大百科全書(ニッポニカ) 「晴れ着」の意味・わかりやすい解説
晴れ着
はれぎ
晴の日に着る衣服をいい、普段着(褻(け)の服)に対することばとして用いられる。人の一生における通過儀礼の冠婚葬祭、すなわち誕生、髪置(かみおき)、袴着(はかまぎ)、帯解(おびとき)の祝い、成年式、婚礼、還暦祝い、葬式、法要などのときには、それぞれの身祝いのしきたりにのっとった盛装をし、また忌み衣を身につける。昔から晴の儀式、祝賀会などには礼装に身を改めて参加し、正月、盆、節供、氏神祭礼などの年中行事には、仕事着を脱いで、汚れのつかない、こざっぱりした衣服に改めた。普段より装いを凝らすところから、「よそい」「よそいぎもん」といい、めでたいときに餅(もち)をつく風習があるので、餅食い衣装ともいわれた。宮参りの赤子には被(かぶ)り着物(きもん)をかけて、無事に成育することを祈願した。正月や盆のときに着る晴れ着を節物(せつもん)という地方もある。着物を意味する「ご」をつけて、正月の着物を正月ご、お盆に着る着物を盆(ぼん)ご、祭礼に着る着物を祭(まつり)ごなどということばも西日本各地にある。田植の着物は五月(さつき)ごである。かつて農業国であった日本民族にとって、田植はたいせつな祭りの行事で、絣(かすり)の着物に、手拭(てぬぐい)、色襷(だすき)で身を装い、豊穣(ほうじょう)を祈りつつ、田植唄(うた)を歌って農作業をした。
[岡野和子]