一般に、国公立や私立の大学、高等教育機関に付属する学校をいうが、もともとは、国立の教育大学・学部等に付属する形で設立されている学校のことである。このような付属学校は、19世紀中葉に欧米諸国で師範学校が設立されたとき、その実習学校として付設され、教育実習などにあてられた。
日本では、1873年(明治6)小学校が師範学校に付設されたのが最初で、師範学校と一体となって運営されてきた。第二次世界大戦後、師範学校は国立の教育大学・学部に改編され、今日そのほとんどすべてに幼稚園、小学校、中学校、特別支援学校が、さらに若干の大学・学部に高等学校が付設されている。
付属学校の目的ないし役割については、その付属する国立大学・学部における児童・生徒・幼児の教育に関する研究に協力し、大学・学部の計画に従い学生の教育実習の実施に当たるとされてきた。つまり、(1)大学・学部の実際的、臨床的な研究への協力、(2)教育実習の実施である。さらに、(3)付属学校は一般の公立学校に比して施設・設備や教員組織が充実していることもあって、地域の教育研究活動に対する先進的な実践の提示を行ってきた。
しかし、今日、大学・学部と付属学校との距離的な隔たり、教員養成について関係者の考え方の相違、一般公立学校のレベルアップなどがあって、前述の役割の遂行については問題がある。また、付属学校は本来特別な目的・役割をもつため、なんらかの方法で選抜入学を行っている。このことが、特定の児童・生徒の入学する特権的な学校というイメージをつくり、激しい受験競争のなかで進学準備学校化しているとの批判を招いている。これも付属学校の抱えている一つの問題である。さらに、国立大学法人化のなかで、付属学校もその組織・運営等新たな問題に当面している。いずれにしても、大学・学部と付属学校の緊密な協力体制を築いていくことが重要である。
こうした教育大学・学部の付属学校とは違ったものとして、私立大学の付属学校があり、私立学校の個性、校風の形成に大きな役割を果たしてきた。ただ、近年における中高一貫教育の普及と少子化に伴う児童生徒減少のなかで、私立大学が付属学校を増設する傾向がみられる。教育大学・学部の付属学校も、また私立大学の付属学校もそれぞれ本来の趣旨に立ち返り、そのあり方を考える必要がある。
[津布楽喜代治]
『藤枝静正著『国立大学附属学校の研究:制度史的考察による「再生」への展望』(1996・風間書房)』
通常,教員養成を主とする教育大学教育学部(第2次大戦前の師範学校)に付設され,教育の実験的研究を行うとともに学生の教育実習の場を提供する学校。J.F.ヘルバルトの実習学校やデューイの実験室学校に通ずる。国立の教育大学教育学部では,幼稚園,小学校,中学校,養護学校を付設するのが常例だが,高等学校を付設する場合もある。私立大学等の場合は,一貫教育の学園経営の見地から付設している。1873年文部省は師範学校に授業法練習のために小学校を付置し,これが日本の付属小学校の嚆矢(こうし)となった。83年府県立師範学校通則により,府県立師範学校にも生徒実地練習(教育実習)のため付属小学校を設け,同時に管内小学校の模範となることを定め,付属学校は模範学校であることを示した。91年尋常師範学校付属小学校規程が定められ,付属小学校制度を確立するとともに単級制(全校の児童生徒を1学級に編成する制度)の実験的研究を促した。さらに1907年師範学校規程においては付属小学校の規定が一段と詳細になり,また特殊学級を設置することなどが促された。大正期の新教育運動は,付属学校を一つの拠点として展開され,いわゆる実験的研究と新教育の実践の推進に重要な役割を果たした。一般に付属学校は,(1)教授法等の研究と実践,(2)教育実習の実施,(3)地域の模範学校としての役割をになうとともに,エリート校としての性格も強めてきた。第2次大戦後の教育改革の際,存廃論を含めて付属学校の改革が検討され,入学者選抜方法の改革も課題とされたが,根本的な改革には至らなかった。今日,国立大学の付属学校についての制度的条件は1949年の国立学校設置法施行規則および54年の国立大学の付属の学校に関する政令に定められ,大学の教育研究活動と教育実習の指導に協力することになっている。
執筆者:山田 昇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
日本において上級学校に付設されている下級学校のこと。国立学校の場合は「附属」と表記するのが正式である。大学に付設されているケースが多いが,教育学系だけでなく工学部や音楽学部の付属校もあるし,高等学校付属校もある。国立大学の付属学校の場合,多くは先進的・先導的な教育実践と併せて,学部・学科等の実験校や実習校としての役割を主として担う。私立学校の場合は,大学付属校は教職課程認定上の教育実習校を兼ねてはいるが,多くは建学の精神に基づいた教育を早期から行うことを趣旨にしているし,上級学校と学校法人内では同格で,付設ではなく併設されている場合も少なくない。近年では中高一貫教育を進めるため,公立高等学校の付属学校として公立中学校を位置づけるケースも出てきた。そうした付属学校の中でも,旧制大学や高等師範学校を母体とする新制大学の付属学校は,その伝統と大学の格付けから入学難関校となっている。また,師範学校を母体とする国立教員養成系大学・学部の付属学校も,有名進学校としての評判が高いのが一般的である。
著者: 木岡一明
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