日本で罪を犯し国外に逃亡した容疑者について、犯罪人引渡条約が締結されていない国に対し、日本政府が捜査資料を提供し処罰を求める手続き。実際に処罰されるかどうかは、それぞれの国の判断に委ねられる。ブラジルは憲法で外国への自国民の引き渡しを禁じており、浜松市のひき逃げ死亡事件で日本の要請に応じて2007年に日系人の男を起訴して以来、国内法の国外犯処罰規定に基づき訴追が続いている。(共同)
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ある国で罪を犯した外国人が自国または第三国へ逃亡し、身柄の引渡しが望めない場合に、犯罪の起きた国の政府が、犯罪人が逃亡した国の政府へ要請し、逃亡先の国の法律に基づいて処罰すること。正式には「国外犯処罰規定による訴追」という。犯罪人引渡条約を締結していない国・地域の間で行われる。犯罪の起きた国の政府は捜査・証拠資料などを逃亡先の国へ提供して協力する。
警察庁によると2012年(平成24)末時点で、日本国内で罪を犯し、国外へ逃亡している外国人容疑者は654人にのぼる。容疑者の国籍・地域別では、中国(270人)、ブラジル(82人)、韓国・北朝鮮(75人)が多い。しかし自国民の他国への引き渡しを憲法で禁じている国が多く、日本と犯罪人引渡条約を結んでいる国はアメリカ(1980年発効)と韓国(2002年発効)の2か国しかない。このため外国人犯罪者の「逃げ得」を許さないという世論に押され、日本政府は外国政府へ代理処罰を適用するよう積極的に求めるようになった。2008年から2012年までの5年間で日本政府の要請で代理処罰が適用されたのは、少なくとも11件(容疑者13人)ある。2003年の福岡市一家4人殺害事件では、事件後中国に逃亡した中国人容疑者2人に代理処罰が適用され、殺人罪での有罪判決がでた。このほか殺人やひき逃げなどをした複数の日系ブラジル人容疑者らがブラジルの裁判で代理処罰されている。
代理処罰は捜査書類の翻訳や相手国捜査当局との協議などの手続きが煩雑なうえ、遺族や被害者が裁判傍聴や証言をする場合、渡航の金銭的、肉体的負担が大きいという問題がある。また、あくまで相手国の法体系に基づいて捜査・裁判が行われ、最終判断は相手国任せになるため、日本の社会通念とはかけ離れた軽い処罰になることもある。このため実際に代理処罰が適用されるのは殺人事件や死亡事故などに限られている。なお代理処罰が実施された後、犯人が罪を犯した国へ再び入国した場合、再入国先の政府は独自に処罰することができる。
[編集部]
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