大学事典 「任用制度」の解説
任用制度
にんようせいど
任用とは,人を特定の職務に就かせて用いることである。任用制度は,職員(大学では教員を含む)の採用や昇進等に関する基準や手続き等を定めるものである。昇進(昇任)は「教職員の昇進制度」の項目で取り上げられているので,本項目では日本における採用(職員)を中心に任用制度について説明する。
一般に任用は,国家公務員法や地方公務員法(以下「両法」)に定められているように,任用される者の能力の実証に基づいて行うとされる(能力主義)。採用については,両法は競争試験に基づくことを原則としているが,例外的にそれ以外の能力の実証に基づく試験(選考)による採用を認めている。大学においては,教員外職員(以下「職員」)の多くは競争試験によって採用されるのに対して,教員についてはその職務の特性を踏まえて選考で採用されるのが通常である。
[教員]
教育公務員特例法(以下「教特法」)は,大学の教員の採用・昇任は選考によるものとし,当該選考は教授会の議に基づき学長が行うと定めている(教授会が置かれる組織の長は当該教授会に意見を述べることができる)。現在では教特法が適用される大学は法人化されていない公立大学に限定されるものの,教特法の定める原則の多くは憲法・教育基本法が定める学問の自由を具現化するものであることから,法人化後の国公立大学や私立大学でも学則等で同法の定める任用に関する原則の多くが導入されている。たとえば東京大学では,東京大学教員の就業に関する規程で「大学教員の採用及び昇任の選考は,教授会が行う」(3条)と定め,教特法より同僚制の強い制度が採用されている。
教員選考の基準は,教特法では評議会(評議会を置かない大学にあっては教授会)の議に基づき学長が定めるとされるが,基準策定の基礎となるべき大学教員の資格は大学設置基準(第4章)が規定している。同基準が定める大学教員資格の資格は研究業績を重視したものであったが,高等教育の多様化等を反映して関連規定は数次にわたって改正され,現在では社会の多様な専門分野で知識・経験を有する者の登用を可能にするとともに,教育上の能力を必須とするものとなっている(助手を除く)。
教員採用を採用することとなった場合,教員選考の手続きは,通常,選考組織(教授会等)の下に置かれた選考委員会(教員採用)等が行う。選考委員会等は,選考基準や募集法等の必要事項を決めて,候補者を募る。募集法は近年,国の政策を反映するなどして,公募(教員採用)によるものが増えている。公募の場合,選考委員会等は書類審査等に基づいて候補者を絞って面接を行い,最終候補者を決定して選考組織に報告する。採用の決定は選考組織が行うが,多くの場合,選考委員会等が選んだ候補者が採用される。教員採用に際して最も重視される基準は,国公私立大学とも研究活動,次いで教育活動であるが,前者を重視する程度は国立・公立・私立の順に高い(2006年広島大学高等教育研究開発センター調査)。
[職員]
近年中途採用が増えてきたものの,職員採用の主流は依然として大学新卒者を対象とした競争試験による定期(4月)採用である。国立大学では,地方単位で行われる国立大学法人等職員統一採用試験(第一次試験)および各大学が行う第二次試験に基づいて採用が行われる(第一次試験を利用せずに,大学独自の試験で職員採用を行う大学もある)。法人化されていない公立大学では,設立自治体の公務員採用試験で一括採用された者の中から職員が配置される。多くは他の部署からの転任であり,一定の期間後に転出することから,大学職員としての専門性が育たないことが課題として指摘されてきた。法人化された公立大学および私立大学では,通常,各法人が行う競争採用試験によって職員採用が行われる。
著者: 大場淳
参考文献: 大学審議会「教員採用の改善について(答申)」文部省,1994.
参考文献: 松野弘『大学教授の資格』NTT出版,2010.
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報