歌舞伎狂言。時代物。通称《先代萩(せんだいはぎ)》《身売りの累(かさね)》。初世桜田治助,笠縫専助合作。1778年(安永7)閏7月江戸中村座初演。配役は絹川谷蔵のちに百姓与右衛門・渡辺民部を4世松本幸四郎,足利頼兼・豆腐屋三婦(さぶ)を初世坂東三津五郎,妹累を4世岩井半四郎,仁木弾正左衛門を3世大谷広右衛門,荒獅子男之助・細川勝元を5世市川団十郎など。伊達騒動に累の伝説をからませた脚色で,初演台帳は伝わっていないが,1808年(文化5)3月江戸市村座上演の4世鶴屋南北の台本では9幕の構成。足利家横領をねらう仁木弾正一味は,当主の弟頼兼に放蕩をすすめ,幼君鶴喜代(つるきよ)の毒害をはかるが,乳人政岡や荒獅子男之助らがこれを阻み,問注所における裁判では細川勝元の明断によって忠臣側の勝訴となり,家は安泰となる。足利家の抱え力士絹川谷蔵は,主家の乱れを救うため,頼兼寵愛の遊女高尾を殺し,その兄豆腐屋三婦の家へ逃げて,末の妹累と夫婦になり,故郷羽生(はにゆう)村で与右衛門と改名して所帯を持つ。しかし累は姉の祟りで容貌が醜く変わり,夫の金策を助けるため身を廓へ売ろうとした貞節もむなしく,たまたま与右衛門が頼兼の許嫁歌方姫を連れてきたのを誤解し,嫉妬に狂ったあげく,ついに夫の手で殺される。歌舞伎初演の翌年3月,達田弁二,吉田鬼眼,烏亭焉馬合作によって人形浄瑠璃になり,江戸肥前座で上演された。近年では歌舞伎でも文楽でも累の筋が独立し,おもに《薫樹累物語(めいぼくかさねものがたり)》の外題で上演される。多くの〈累物〉の中でも,怪談より女心の哀れさに重点を置いた佳品で,初演の半四郎の型が後世に伝わった。また,伊達騒動の筋は歌舞伎の《伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)》に吸収され(伊達騒動物),役名や〈床下〉〈対決〉〈刃傷〉などの場面の基礎になっている。
執筆者:松井 俊諭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
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