日本大百科全書(ニッポニカ) 「佐川」の意味・わかりやすい解説
佐川(町)
さかわ
高知県のほぼ中央部、高岡郡の町。1900年(明治33)町制施行。1954年(昭和29)斗賀野(とがの)、黒岩、尾川(おかわ)の3村と合併。1955年加茂村の一部を編入。町域の大部分は仁淀(によど)川支流の柳瀬(やなせ)川流域で、佐川、斗賀野の小盆地が開けるほかは山地や丘陵である。古来、高知城下町から西に向かう主要交通路筋にあたり、現在もJR土讃(どさん)線や、仁淀川上流から愛媛県松山市方面へ向かう国道33号、須崎市に向う494号が通じる。佐川、斗賀野盆地は良米の産地で、北東部丘陵では茶やナシ、クリの栽培も多い。かつては東部の大平山鉱山を中心に石灰岩採掘が盛んであった。地質構造が複雑で化石も多く、地質学研究に適している。中心地佐川は、近世の土佐藩家老深尾氏の小城下町を継承し、酒造地としても知られる。維新の志士で後に宮内大臣となった田中光顕(みつあき)、植物学者牧野富太郎(とみたろう)らの出身地で、田中が寄贈した書籍や資料を収蔵する青山文庫(せいざんぶんこ)がある。大乗院の薬師如来(にょらい)および両脇侍像は国の重要文化財、不動ガ岩屋洞窟(どうくつ)遺跡は国の史跡に指定されている。面積100.80平方キロメートル、人口1万2323(2020)。
[大脇保彦]
『『佐川町史』上下(1981、1982・佐川町)』