余す(読み)アマス

デジタル大辞泉 「余す」の意味・読み・例文・類語

あま・す【余す】

[動サ五(四)]
余分なものとして残す。余らせる。「料理が多すぎて―・してしまった」
限度に達するまでの余地を残す。「今年も―・すところあと三日」
(主に受身の形で用いる)持て余す。手に余る。
「天の原朝行く月のいたづらによに―・さるる心地こそすれ」〈頼政集
こぼす。満ちあふれるようにする。
「憐みとる蒲公たんぽぽ茎短うして乳を―・せり」〈春風馬堤曲
[可能]あませる
[類語]残す余る浮かす余りある有り余るだぶつく繰り越す

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「余す」の意味・読み・例文・類語

あま・す【余】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. 余分なものとして残す。
    1. [初出の実例]「御諸(みもろ)に 築くや玉垣 つき阿麻斯(アマシ)(た)にかも寄らむ 神の宮人(みやひと)」(出典古事記(712)下・歌謡)
  3. ある範囲からもらす。のがす。
    1. [初出の実例]「但し大将は、もとの重盛ぞ。已前こそもらすとも、今度においてはあますまじ」(出典:平治物語(1220頃か)中)
  4. 除外する。
    1. (イ) ( 主として受身の形で用い ) もてあます。
      1. [初出の実例]「世にあまされて、期(ご)する所なきものは愁へながら止まり居り」(出典:方丈記(1212))
    2. (ロ) 除外してあとに残す。置きざりにする。捨ててかえりみない。
      1. [初出の実例]「染て憂(うき)木綿袷のねずみ色〈里東〉 撰あまされて寒きあけぼの〈探志〉」(出典:俳諧ひさご(1690))
  5. ある範囲からあふれ出させる。
    1. (イ) あふれさせる。こぼす。とび出させる。
      1. [初出の実例]「馬は屏風をたふすごとく、がはとたふるれば、主は前へぞあまされける」(出典:保元物語(1220頃か)中)
    2. (ロ) 言葉などを必要以上に用いる。また、歌句が字余りになるようにする。
      1. [初出の実例]「下衆の言葉に、かならず文字あましたる」(出典:能因本枕(10C終)四)
  6. ある限度に達するまでのゆとり、余地を残す。
    1. [初出の実例]「一筋を前後に余(アマ)して、深い谷の底を鉄軌(レエル)が通る」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一七)
  7. 囲碁用語。
    1. (イ) 初めに確実な地をとっておいて、あとは相手の攻めを受け流して勢力を役立たせないように打つ。
    2. (ロ) 終局して互いの地を数えあったとき、相手より何目か勝っている。残す。
  8. ( 動詞の連用形に付いて補助動詞的に用いる ) …しおおせないで残す。十分…してもし尽くせない。
    1. [初出の実例]「或はいねをかりあます者もあり」(出典:四河入海(17C前)一五)

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