残す(読み)ノコス

デジタル大辞泉 「残す」の意味・読み・例文・類語

のこ・す【残す/遺す】

[動サ五(四)]
あとにとどめておく。残るようにする。「放課後まで生徒を―・す」「メモを―・して帰る」
もとのままにしておく。「昔の面影を―・す」「武蔵野自然を―・す地区
全体うちの一部などに手をつけないでおく。「食べきれずに―・す」「電車賃だけは―・す」
消さないでそのままにしておく。「証拠を―・す」「誤解を―・す」
後世に伝える。死後にとどめる。「偉大な足跡を―・す」「名を―・す」
ためこむ。「小金こがねを―・す」
相撲で、相手の攻めに対して踏みこらえる。「土俵際で―・す」
[可能]のこせる
[類語](1とどめる残置する伝える/(2保存する温存する存置する/(3余す余る浮かす余りある有り余るだぶつく繰り越す

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「残す」の意味・読み・例文・類語

のこ・す【残・遺】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
    1. (イ) 一部分をあとにとどめておく。なくさないようにする。
      1. [初出の実例]「我が背子が帰り来まさむ時のため命能己佐(ノコサ)む忘れたまふな」(出典万葉集(8C後)五・三七七四)
      2. 「御かたみにとて、かかるようもやとのこし給へりける御さうぞくひとくだり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
    2. (ロ) 他の者が去ったあと、一部の者をそこにとどめておく。
      1. [初出の実例]「二人はめしかへされて都へのぼりぬ。いま一人はのこされて」(出典:平家物語(13C前)三)
    1. (イ) 人が立ち去ったあと、また、死んだ後にとどめておく。後世に伝える。
      1. [初出の実例]「時じくの 香(かく)の木の実を 畏くも 能許之(ノコシ)たまへれ」(出典:万葉集(8C後)一八・四一一一)
    2. (ロ) 事のすんだあとも消えずにあるようにする。
      1. [初出の実例]「ちりぬともかをだにのこせ梅花こひしき時の思ひいでにせん〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)一・四八)
  2. 言わずにとっておく。隠しておく。
    1. [初出の実例]「など、かく思す事あるにては、今まで、のこい給ひつらむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)柏木)
  3. ある範囲や期限までに、なお余地や余裕をもつ。また、気持に余裕をもつこともいう。「あと五日を残すのみ」
    1. [初出の実例]「後ろは羽目板の間を二尺遺して吾輩の鮑貝の所在地である」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉五)
  4. 囲碁で、終局して互いの地を数えあったとき、相手より何目か勝っている。あます。
  5. 相撲で、相手の攻めに対し土俵ぎわで踏みこらえる。
    1. [初出の実例]「駒ははたいたが、太刀はよく残してつけ入り」(出典:相撲講話(1919)〈日本青年教育会〉常陸、梅の爛熟時代)

残すの補助注記

「何かおもひ残する事もなし」〔浮・西鶴諸国はなし(1685)三〕のように、連体形に「残する」を用いる例が西鶴の作品に見られる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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