作業検査法(読み)さぎょうけんさほう

最新 心理学事典の解説

さぎょうけんさほう
作業検査法
performance test

作業検査法とは,特定の時間に決められた作業を繰り返し行ない,その作業量の多さや作業量の変化に注目することで性格の判断を行なう性格検査の一種である。課題が容易で特別な準備が必要とされないこと,集団で実施することが可能なこと,測定内容の意図が知られにくいことなどの利点があるとされる。その一方で,得られた作業量の解釈には熟練を要すること,また得られた作業量およびその変化が,どの程度実際の性格を反映しているかという点に疑問を呈する研究者もいる。現在でもわが国で使われている代表的な作業検査法は,内田勇三郎によって独自に開発された内田-クレペリン精神検査Uchida-Kraepelin performance testである。1902年にドイツの精神医学者クレペリンKraepelin,E.は,複数の研究者による,加算を連続して行なう作業に関連する研究成果をまとめた。その後,日本でもクレペリンが行なったような作業に関する研究が,進められるようになっていった。内田は,クレペリンの成果の追試を行なう中で,連続加算作業が性格の測定に応用できるのではないかと考えた。また同時に,内田はクレッチマーKretschmer,E.の性格類型にも興味をもっていた。そして,加算作業の結果とクレッチマーの性格分類との間に関連があると考え,検査結果の解釈に応用した。内田-クレペリン精神検査に必要なものは,検査用紙と鉛筆,ストップウォッチである。検査用紙にはランダムな1桁の数字が印刷されており,隣り合った二つの数字を加算し,下1桁の数字を印刷された数字の間に記入する。検査終了後は,各行の計算された最後の部分を線で結ぶことによって,作業曲線を描く。多くの人びとが典型的に描く曲線を,健常者常態定型曲線とよぶ。定型曲線の特徴は,①前半15分間がU字形の曲線を描く,②後半15分間は右下がりになる,③後半の作業量は前半以上となる,④曲線がなだらかではなく適度に増減を繰り返す,⑤誤答が少ない,⑥作業量が極端に少ないということがない,などである。性格の判定は,健常者常態定型曲線からの逸脱の方向と程度に基づいて行なう。誤答の多発や作業量の大幅な落ち込み,特定部分だけの作業量の突出,作業量の増減が極端であること,逆に増減がまったくないこと,前半よりも後半の作業量が減少している,などの特徴が見られた場合に,非定型曲線とよぶ。結果の解釈には複数の方法が存在しており,体系的・理論的な統合が不十分な面も見られる。作業量に基づいて直観的に判定する方法は,判定者間の不一致をもたらしやすい。

 1958年に横田象一郎は,五つの指標から成る数量的な判定基準を提唱した。1975年には柏木繁男が,理論的作業量と実際の作業量から,定型曲線からの差を数量的に表現するPF式評価法を開発した。また日本・精神技術研究所は,発動性・可変性・亢進性という三つの指標を用いた判定方法を提唱している。内田-クレペリン精神検査は学校や入社試験などで幅広く用いられている。

 また,ダウニーDowney,J.E.が作成し,桐原葆見が1930年に発表した意志気質検査will-temperament test も,日本で標準化された作業検査法である。この検査は一定時間に斜線を描いたり,破線をたどったり,つながった輪を描くなど10の下位検査で構成されている。得られた検査結果を意志プロフィールとよばれるグラフに表わし,その形状を類型化して解釈を行なうのである。 →性格検査 →性格心理学 →類型学
〔小塩 真司〕

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世界大百科事典内の作業検査法の言及

【人格検査】より

…(2)他人評定法 ソシオメトリー,ゲスフー・テストなどがある。(3)作業検査法 一定の作業結果により人格を診断するもので,内田=クレペリン作業検査(クレペリン・テスト),ダウニー=桐原意志気質検査などがある。(4)実験心理学的方法 実験的手法を用いて,たとえば感情の生理的変化をみるもので,皮膚電気抵抗(PGR)により感情や緊張の程度を調べるもの。…

※「作業検査法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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