平安京内裏内の進物所の西に置かれ,宮中の調度を作る内廷的な所。内匠寮(たくみりよう)の出先機関的な役割を果たしたものと思われ,蔵人所の配下に置かれた。《西宮記》にみえる840年(承和7)灌仏の際に蔵人の指示で雑具を作ったという記事が初見史料で,その活動の一端を示せば,904年(延喜4)東宮のために御帳,台盤,銀器を,また大嘗会用に台盤,銀器を作ったことや,959年(天徳3)に卯杖(うづえ)を作製したこと,1015年(長和4)に神宝を作ったこと等々をあげることができる。所の職員としては別当,頭,預(あずかり)が置かれた。このほかに冶師がいたことも知られ,その他の工人たちもここに属していたものと思われる。別当には蔵人頭が任命される場合が多かった。
執筆者:玉井 力
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
令外(りょうげ)の官司(かんし)の一つ。宮中の調度品をつくる所。進物所(しんもつじょ)の西にあった。平安時代には令制官司のほかに、内裏(だいり)に多くの「所」が置かれたが、この作物所もその一つ。国史上の初見は『続日本後紀(しょくにほんこうき)』の承和(じょうわ)15年(848)3月条であるが、『西宮記(さいぐうき)』によれば、その成立は840年(承和7)以前となる。職員には別当(べっとう)、預(あずかり)があり、その下に冶師(やし)などの技術工が所属する。別当は蔵人頭(くろうどのとう)が兼ねた場合もあるが、これは、作物所が蔵人所の被管として、蔵人の命令を受けて雑器具の工作、修理にあたるためであろう。この「所」で実際に作成、修理された器具類には、神宝(じんぽう)、御帳(みちょう)、台盤(だいばん)、銀壺、銀筥(ぎんのはこ)、卯杖(うづえ)や銭貨の文字彫りなどがある。
[渡辺直彦]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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