令外官(読み)りょうげのかん

改訂新版 世界大百科事典 「令外官」の意味・わかりやすい解説

令外官 (りょうげのかん)

律令職員令に規定されていない官司あるいは官職をいう。《続日本紀》などに〈令外諸司〉〈令外之官〉などと見える。太政官に属する令外官としては,702年(大宝2)の参議をはじめ,続いて設けられた知太政官事(ちだいじようかんじ),中納言(ちゆうなごん),内大臣(ないだいじん)があり,省では造宮省,中宮省,勅旨省(ちよくししよう),内豎省(ないじゆしよう),職では皇后宮職法王宮職修理職(しゆりしき),寮では斎宮寮(さいぐうりよう),内匠寮(たくみりよう),授刀舎人寮(じゆとうとねりりよう)(授刀衛),主馬寮(しゆめりよう)(馬寮),兵庫寮(ひようごりよう),司では鋳銭司(ちゆうせんし),造平城京司,造東大寺司,そのほか紫微中台(しびちゆうだい),中衛府(ちゆうえふ),近衛府(このえふ),外衛府(がいえふ),按察使(あぜち),鎮撫使(ちんぶし),節度使(せつどし),観察使(かんさつし),勘解由使(かげゆし),検非違使(けびいし),さらに蔵人所(くろうどどころ),摂政関白などがある。これら令外官は,中納言,紫微中台,按察使,中衛府など官位相当のある官と,参議,蔵人,検非違使など官位相当のないものに分けられ,前者は令制官職と同格の官であり,前者と後者任命の手続にも相違のあることが明らかにされている。
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百科事典マイペディア 「令外官」の意味・わかりやすい解説

令外官【りょうげのかん】

律令時代,令に規定されたほかに新たに設けられた官職。奈良時代に置かれた内大臣・中納言(ちゅうなごん)・参議,平安初期の関白蔵人(くろうど)・勘解由使(かげゆし)・検非違使(けびいし)など。平安以後実権を振るった。
→関連項目押領押領使記録所蔵人所皇后宮職参議修理職造東大寺司内匠寮中納言鎮撫使追捕使内大臣法王宮職

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「令外官」の意味・わかりやすい解説

令外官
りょうげのかん

律令制において,令に規定されていない官をいう。これには令制以前に存在しながら,令に規定されなかった官と,令施行以後新設された官とがある。そのおもなものは,摂政関白をはじめ,内大臣中納言参議近衛府征夷大将軍鎮守府将軍,中宮職蔵人所和歌所記録所勘解由 (かげゆ) 使検非違使,陸奥出羽按察使 (あぜち) ,押領使追捕使 (ついぶし) などで,特に蔵人所と検非違使は平安時代以降次第に権限を伸ばしていった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「令外官」の意味・わかりやすい解説

令外官
りょうげのかん

古代、令の規定にない官職、官司(かんし)をいう。元来、令制官職の不備を補うため、必要に応じてそのつど臨時に置かれたもので、したがって所期の目的を果たしたのち廃止されたものも少なくないが、なかには常置の官のようになったものもある。厳密にいえば、令外官には、官位相当を定めた「官」と、相当位階のない「職(しき)」とがあるが、一般には前者の「除目官(じもくのかん)」と、後者の「宣旨職(せんじのしき)」または「宣下職(せんげのしき)」とをあわせて令外官とよんでいる。よく知られたものに、内大臣、中納言(ちゅうなごん)、参議、勘解由使(かげゆし)、按察使(あぜち)、征夷(せいい)大将軍、造寺司、修理職(しゅりしき)、検非違使(けびいし)、蔵人(くろうど)、摂政(せっしょう)、関白などがある。平安時代には検非違使庁と蔵人所(どころ)の活躍が顕著である。

[渡辺直彦]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「令外官」の解説

令外官
りょうげのかん

大宝令制定後に新設された職員令に規定のない常置の官司・官職。奈良時代~平安初期に新設の令外官の多くは,太政官に所属する官職(内大臣・中納言)や令制官司と同格の官司(中衛府・造宮省・修理職(しゅりしき)・斎宮寮・造○○司など)であり,それらは官位相当・除目(じもく)任命という点でも令制官と同じであり,太政官に統轄される令制官司に準じたものである。それに対して平安時代に新設された令外官の多くは,摂政・関白・蔵人(くろうど)・検非違使(けびいし)・禁中所々など,令制官司とは無関係に,特定の職務・権限が官司化・官職化したもので,官位相当はなく,ほかに本官をもつ者の兼官であった。それらは天皇との臣従関係にもとづき宣旨(せんじ)によって任命され,多くは天皇の代替りの際,任命し直された。

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旺文社日本史事典 三訂版 「令外官」の解説

令外官
りょうげのかん

律令制下,令に規定されていない新しい官職
平安初期に設置された蔵人 (くろうど) ・検非違使 (けびいし) は有名であるが,そのほか奈良時代の中納言・参議,平安時代の勘解由使 (かげゆし) ・按察使 (あぜち) ・内大臣・摂政 (せつしよう) ・関白などがある。実際政治の必要上から新設されたものであるが,のちには令制官職が実権を失うほど,重要な意味をもつようになった。

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世界大百科事典(旧版)内の令外官の言及

【唐】より

…中国,に続く統一王朝。618‐907年。首都は長安(陝西省西安市)で副都が洛陽(河南省洛陽市)。王室の李氏が北周王室の宇文氏,隋王室の楊氏とともに,北魏が北辺に配置した6軍団の一つである武川鎮軍閥の出身であるという共通点をもっていたこともあり,唐の政治と制度には北周と隋のそれらを継承するものが多い。唐朝の国号は,李淵の祖父李虎が漢の太原郡にあたる唐国公の封爵を北周より受け,また李淵が隋より唐王に進封されたことに由来するという。…

※「令外官」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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