侵略的外来種(読み)シンリャクテキガイライシュ

デジタル大辞泉 「侵略的外来種」の意味・読み・例文・類語

しんりゃくてき‐がいらいしゅ〔‐グワイライシユ〕【侵略的外来種】

外来生物うち、特に既存生態系農業などの人間活動への影響が大きい種。侵略的外来生物

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「侵略的外来種」の意味・わかりやすい解説

侵略的外来種
しんりゃくてきがいらいしゅ

人間の活動によって本来生息していない地域に入ってきた、その地域の生態系や人間活動に被害を及ぼすおそれのある生物。捕食や交雑で生態系を乱すほか、人の生命や健康を損ない、農水産物に影響を与えたり、被害をもたらしたりするものが該当する。外国由来に限らず、本州に生息する生物が北海道や離島などに侵入して被害を及ぼす場合などもこれにあたる。人間活動のグローバル化に伴い、侵略的外来種は世界規模で広がっており、多くの在来種絶滅危機にある。このため2010年(平成22)の生物多様性条約締約国会議COP10)で合意した生物多様性を守るための「愛知目標」には、侵略的外来種対策の必要性が盛り込まれた。国際自然保護連合は「世界の侵略的外来種ワースト100」を、日本生態学会は「日本の侵略的外来種ワースト100」をそれぞれ公表。日本政府も2012年に「生物多様性国家戦略2012―2020」を閣議決定し、2015年に侵略的外来種429種類を生態系被害防止外来種リストとして、種類ごとの対策を盛り込んだ行動計画とあわせて公表した。なお侵略的外来種は地域によって異なり、日本では問題のない魚のコイ海藻ワカメ植物クズなどは、北アメリカでは侵略的外来種となる。外来種のおよそ5~20%が侵略的外来種に該当するとされている。

 日本政府が公表した生態系被害防止外来種リストは、輸入・販売・譲渡・飼育・栽培・運搬などが外来生物法で禁止されている特定外来生物のほか、本来生息していない北海道や離島へもち込まれたニホンイタチ、カブトムシなどの「国内由来の外来種」も含んでいる。政府は生態系被害防止外来種を、(1)東南アジア原産のジャワマングースなど日本への侵入を防ぐべき「侵入予防外来種」、(2)フェレット、フランスゴムノキなどペットあるいは観賞用として広まっているが国内での定着を防ぐべき「定着予防外来種」、(3)アライグマやアレチウリなど急いで取り除く必要のある「緊急的対策外来種」、(4)ハクビシン、セイタカアワダチソウなど駆除対策が必要な「重点対策外来種」、(5)グッピーなどむやみに野外に放さないように注意喚起する「その他の総合対策外来種」、(6)ニジマス、キウイフルーツなど産業で利用されているが適切な管理が必要な「産業管理外来種」、の六つに分類。種類ごとに想定被害や駆除・管理法などを明記した行動計画を公表し、地方公共団体や民間企業、非政府組織などに監視や対策を呼びかけている。政府は数年ごとにリストを更新する計画である。

[編集部]

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