保険者が被保険者に保険金を支払ったときに,一定の要件のもとに,被保険者の有するある種の権利が保険者に移転することをいう。保険代位は保険金の支払により被保険者が不当な利益を得ることを防止する措置であり,損害の塡補(てんぽ)を目的とする損害保険契約のみに認められ,生命保険契約には認められていない。商法上,保険代位には残存物代位(661条)と請求権代位(662条)がある。前者は,保険の目的が全部滅失し保険金が全部支払われた場合にその目的について有していた被保険者の権利が保険者に移転することであり,海上保険における難破物や火災保険における焼残物に対する所有権などがある。後者は,第三者の行為によって損害が生じた場合に第三者に対して発生した保険契約者または被保険者の権利が,支払われた保険金の限度において保険者に移転することであり,火災保険における所有者の賃借人に対する損害賠償請求権などがある。
執筆者:高木 秀卓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 絶対全損と推定全損のいずれの場合であっても,保険会社は被保険者(保険金を受け取る権利をもつ人)に保険金額の全額を支払うこととなり,その結果として保険の目的の残存物があれば保険会社はその残存物について被保険者が有している権利を取得する(商法661条)。これを保険代位という。 分損は全損以外のすべての損害をいう。…
※「保険代位」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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