海上保険は,保険の目的が船舶であるか船舶積載貨物であるかによって,船舶保険と貨物海上保険(積荷保険ともいう)とに大別される。船舶保険の引受けの対象は,貨物船,タンカー,フェリー,漁船等の通常の船舶に限らず,はしけ,ブイ,さらには海底石油掘削装置に至るまで広範囲にわたり,また保険の目的は船体,機関,属具のほか燃料,食料その他の消耗品も船舶の使用目的に供するために船舶内にあればこれに包含されるのが通例である。船舶保険が塡補(てんぽ)する損害の範囲としては,日本では全損(全損・分損),救助費,共同海損のほか沈没,座礁,座州,火災および衝突によって生じた損害の修繕費,他船との衝突によって生ずる衝突損害賠償金が含まれるのが一般的であり,これらを塡補範囲とするものを第五種条件とよぶ。また建造保険,修繕保険,係船保険など船舶のそれぞれの状態に応じた各種の保険がある。その他,普通期間保険(期間は通常1年)では戦争地域の航行に際しての,水雷などによる爆発,拿捕(だほ)などの戦争危険については保険者免責とされているが,これらの戦争に伴う危険を塡補するのが戦争保険である。また海難事故により船舶が運航できなくなったときの海運会社の運賃,用船料の損失を塡補する船舶不稼働損失保険も船舶保険の一種である。普通期間保険以外にも1航海ごとに付保される航海保険がある。船舶保険の特徴は,対象物件(船舶)が高額で,しかも自動車保険などに比べて引受件数が少ないため大数の法則が働きにくく,このため保険会社は大事故に備えて再保険を活用することがとくに必要である。また海上保険は一般に国際的な性格が強く,常時海外保険市場との競争にさらされているため,保険業法12条の3は,海上保険事業について業者間の協定その他の共同行為を独占禁止法の適用除外と規定している。これに基づいて損害保険会社が構成する日本船舶保険連盟は,船舶保険料率の算出,船舶保険約款と引受条件の決定を行い協定料率制度を運用している。
執筆者:高木 秀卓
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船舶が、衝突・座礁などの海上危険によって被る損害を填補(てんぽ)する保険で、海上保険の一種。
[編集部]
出典 みんなの生命保険アドバイザー保険基礎用語集について 情報
…航海に関する事故によって生ずる損害を塡補(てんポ)する損害保険。船舶のほか,船舶の属具・船費・用船料・運賃などを対象とする船舶保険と,積荷のほか諸掛,希望利益,運賃などを対象とする積荷保険(貨物海上保険ともいう)とに大別される。
[歴史]
海上保険の歴史は他の保険に比べはるかに古く,各種の現代的保険の母体といわれている。…
…積荷保険ともいう。なお,船舶を対象とする海上保険は船舶保険と呼ばれる。貨物海上保険では貨物自体のほか,運賃,輸入税,希望利益などもその対象となる。…
※「船舶保険」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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