倉田百三の戯曲。1916年(大正5)より17年にかけて《白樺》衛星誌の一つでもあった《生命の川》に発表。ついで岩波書店より刊行され,たちまちベストセラーとなる。19年創作劇場によって有楽座で初演。大正期の宗教文学の傑作として著名。親鸞の思想を下敷きにし,宗教と愛欲,罪と愛との葛藤を問題意識として展開。親鸞とその弟子の唯円,親鸞の子の善鸞,遊女浅香らが中心人物。すべてを仏にまかせ,不信心の子も許され,親鸞の平和な死で終わるこの戯曲が契機となって,宗教文学ブームが起こり,とくに親鸞の時代ともいわれるべき現象が出現した。倉田の体験した失恋や病気の苦しみの末に作り出されたものである。倉田の評論《愛と認識との出発》(1921)とともに戦前までの旧制高校生などの必読の書でもあった。
執筆者:紅野 敏郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
倉田百三の戯曲。序曲と6幕13場。1917年(大正6)岩波書店刊。親鸞(しんらん)の子善鸞(ぜんらん)は、この世の義理に恋人を奪われ、人妻となったその人への悲恋から、他人の運命を損なったとして勘当され、遊女と酒に浸る。善鸞の偽善のない誠実さに打たれた親鸞の弟子唯円(ゆいえん)は父子の和解を図るが、自らも遊女かえでとの恋に陥り、師の導きで仏門に入った彼女と結ばれる。善鸞は、仏を信ずるかとの父の臨終の問いに、苦しげにまだわからないと答える。親鸞は柔らかな表情で、それを肯定する。純粋な浄土真宗思想と異なり、キリスト教的色彩も濃く、恋愛と性欲の相克という現世的課題と、みずみずしい情感が、若い感動をよんだ。英語、ドイツ語、フランス語、中国語に訳され、ロマン・ロランの激賞を受けた。
[高橋新太郎]
『『出家とその弟子』(岩波文庫・旺文社文庫・角川文庫・新潮文庫)』
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…1913年結核にかかり一高を退学,療養生活ののち西田天香の一灯園に入る。16年から17年にかけて《白樺》の衛星誌《生命の川》に戯曲《出家とその弟子》を発表,岩波書店より刊行され,広く読まれた。その後《白樺》誌上で活躍,書きためていた評論,感想をまとめて《愛と認識との出発》と題し,21年岩波書店より刊行した。…
※「出家とその弟子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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