(読み)ドウ

精選版 日本国語大辞典の解説

はたらか・す【働】

〘他サ五(四)〙
① 動かす。
※枕(10C終)二四四「二つを並べて、尾のかたにほそきすばえをしてさし寄せんに、尾をはたらかさんを女(め)と知れ」
② はたらくようにする。活動させる。活用させる。応用する。
※日葡辞書(1603‐04)「チエヲ fataracasu(ハタラカス)
③ 文法で、用言や助動詞が語形を変化させる。活用させる。
※詞八衢(1808)上「これらも四段にはたらかしたるは一つもなし」

はたらき【働】

〘名〙 (動詞「はたらく(働)」の連用形の名詞化)
① 動くこと。行動すること。ふるまうこと。
※古今著聞集(1254)二〇「大なるくちなはありけり。〈略〉おほきなる釘にうちつけられて、とし比はたらきもせで、かくてありける也」
② 仕事をすること。労働すること。
※浮世草子・西鶴織留(1694)三「大かたのはたらきにては中々身過に成難し」
③ 活躍すること。努力すること。尽力すること。また、それによって得た賞や名声。てがら。
※政基公旅引付‐文亀三年(1503)七月二六日「谷中として日禰野番頭衆へ相当之働をめされ候て」
④ 特に戦場での活躍。また、その戦い。
※御伽草子・三人法師(室町末)「いかなるおにかみ、なひし五百き(三百き)の中へわって入、心ばかりのはたらき」
⑤ 役目を果たすこと。効果をあらわすこと。機能。ききめ。
※俳諧・貝おほひ(1672)二七番「一句のはたらき見え侍らず」
⑥ 事を行なう能力。役目を果たす力。機転。才能。技量。才覚。
※浄瑠璃・生玉心中(1715か)上「千万砕く気の働(ハタラキ)、胸の吹子(ふいご)に怒の火熖」
⑦ 悪事を行なうこと。また、その人。すり・おいはぎの類。
※浮世草子・本朝二十不孝(1686)二「前髪立の野等には巾着切を教へ、大胆者には追剥の働(ハタラキ)をならはせ」
⑧ 雑役に使われる小者。下働き。
※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉六「役夫(ハタラキ)の南京がきょろきょろ眼で見まはりにきたぜ」
⑨ 他に力を及ぼすこと。作用。
⑩ 能の用語。
(イ) 能楽論などで、能の舞台上の動き全体をいう。また、抽象的な表現である舞に対し、特定の意味を持つ動作をさすこともある。
※風姿花伝(1400‐02頃)六「音曲よりはたらきのしゃうずるは劫(こう)入りたる故也」
⑪ 歌舞伎囃子の一つ。⑩
(ロ) を転用したもの。舞働。
⑫ 文法で、用言や助動詞が語形変化すること。活用。
※詞八衢(1808)上「活はすべていとおほくさまざまなる中に四種の活〈略〉いとおほくしてこれにならぶはたらき他にはなし」

はたら・く【働】

[1] 〘自カ五(四)〙
① からだを動かす。動く。
※宇津保(970‐999頃)国譲中「生きてはたらき給ふ仏と言はれ給ふ加持参り給へば」
※平家(13C前)五「まったく文覚いづまじとてはたらかず」
② 行動する。ふるまう。
※史記抄(1477)一六「服は射成敗也とは事の成敗を見てはたらくぞ」
③ 努力して事をする。精出して仕事をする。労働する。
※方丈記(1212)「つねにはたらくは、養性なるべし」
※歌舞伎・五十三駅扇宿附(岡崎の猫)(1887)序幕「京から三里の道、働(ハタラ)いた方でござります」
④ 特に、戦場で活躍する。また、出撃する。
※御伽草子・あきみち(室町末)「けっく散々にはたらきて、そくばくの人をそんざし」
⑤ 心などが、ゆれ動く。動揺する。
※平家(13C前)一〇「又もしたふ事あらば、心もはたらき候ぬべし」
⑥ 精神などがよく活動する。機転がきく。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※俳諧・本朝文選(1706)三・譜類・百鳥譜〈支考〉「梟の昼出て、まよひありきぬるいとおかし。かならず笑はれじと、はたらきたる顔にもあらず」
※道草(1915)〈夏目漱石〉六九「細かい事に迄よく好奇心を働(ハタ)らかせたがった」
⑦ 役に立つように用をする。効果をあらわす。機能する。
※四座役者目録(1646‐53)下「艷なく、きてんなく、働かぬ鼓なり」
⑧ (他動詞的にも用いる) 他人のために努力する。他人のために奔走したり取りはからったりする。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)五「念比にする馴染甲斐には、こんな所をはたらけ」
⑨ 他にある力を及ぼす。作用する。
※不思議な鏡(1912)〈森鴎外〉四「そのうち水平に働(ハタ)らいてゐた磁石力が」
⑩ 能で、特定の意味を持つ、強くはげしい動きをする。
※風姿花伝(1400‐02頃)二「その持ち様、使ひ様をよくよく伺ひて、その本意をはたらくべし。相構相構、鬼のはたらき、又舞の手になる所を用心すべし」
⑪ 用言や助動詞の語形が変化する。活用する。
※語意考(1769)「萌(もえ)はもゆもえとはたらくは常也」
[2] 〘他カ五(四)〙 (悪事などを)する。行なう。
※仮名草子・浮世物語(1665頃)三「人前に慮外をはたらき」
[語誌]①が本来の意味。そこから③の意味が派生し、中世になると、この意味を表わすために「人」と「動」とを合わせて「働」という国字ができた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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