能・狂言の用語。囃子と所作からなる囃子事小段のうち,演者(立役(たちやく),立方(たちかた))が舞台上で表現する所作に,ある程度表意的な要素が含まれるものを働事という。能の働事には,笛(能管),小鼓,大鼓で奏する〈カケリ(翔)〉〈イロエ〉〈切(きり)組ミ〉と,太鼓の入る〈舞働(まいばたらき)〉〈打合働(うちあいばたらき)〉〈イノリ〉,両様の〈立回リ〉の7種がある。〈カケリ〉は武士の霊や狂女などが興奮状態を示すもので,《俊成忠度(しゆんぜいただのり)》《浮舟》《隅田川》《蟬丸(せみまる)》などに用いられる。〈イロエ〉は女性がクセなどの前に舞台上を静かに一巡するもので《花筐(はながたみ)》《百万》などに,〈切組ミ〉は大勢の武士どうしが切り合うもので《烏帽子折(えぼしおり)》などに用いられる。〈舞働〉は竜神・天狗・鬼などが威勢を示すもので《春日竜神》《鞍馬天狗》《野守(のもり)》などに,〈打合働〉は天狗・鬼などが大勢の武士を相手に闘争したりするもので《大江山》《竜虎》などに,〈イノリ〉は僧や山伏が猛り立つ鬼女などを祈り伏せるもので《葵上(あおいのうえ)》《道成寺》などに用いられる。〈立回リ〉は〈イロエ〉と同じように舞台上を静かに一巡するもので,《大会(だいえ)》のように太鼓の入るものと,《弱法師(よろぼし)》のように太鼓の入らないものがある。
狂言の働事には,笛,小鼓,大鼓,太鼓で奏する〈舞働〉〈責メ〉と,太鼓の入らない〈カケリ〉がある。〈舞働〉は能の舞働を模したもので,《毘沙門連歌》《夷大黒(えびすだいこく)》などの福神物と,《歌仙(かせん)》《菓争(このみあらそい)》などの大勢物に用いられる。〈責メ〉は地獄の鬼が亡者を責めるもので,《八尾(やお)》《朝比奈》《瓜盗人》などに用いられる。〈カケリ〉は能のカケリを簡略化したもので,《金岡》《法師ヶ母》《名取川》の狂乱的なものと,《楽阿弥(らくあみ)》《通円》《野老(ところ)》などの舞狂言物に用いられる。
執筆者:松本 雍
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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