僧官(読み)ソウカン

デジタル大辞泉 「僧官」の意味・読み・例文・類語

そう‐かん〔‐クワン〕【僧官】

朝廷から僧に与えられる官職僧正僧都そうず律師など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「僧官」の意味・読み・例文・類語

そう‐かん‥クヮン【僧官】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「そうがん」とも ) 天皇から賜わる僧侶の官。僧正・僧都(そうず)・律師など。仏教以外の僧侶もいう。
    1. [初出の実例]「僧官採択故実事」(出典:釈家官班記(1355)下)
    2. 「Sôquan(ソウクヮン)。または、Sôguan(ソウグヮン)〈訳〉僧侶の位」(出典日葡辞書(1603‐04))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「僧官」の意味・わかりやすい解説

僧官
そうかん

僧尼を統括し、その非行を取り締まる役。国家は仏教教団を行政組織に組み入れて支配するために、種々の制度を設け、さらに僧官を任命した。日本では、すでに養老令(ようろうりょう)(718)に僧尼令27条があって僧尼を取り締まり、それより先、624年(推古天皇32)に百済(くだら)の僧観勒(かんろく)が僧正(そうじょう)に任ぜられ、683年(天武天皇12)には、中央に僧正、僧都(そうず)、律師(りっし)の僧綱(そうごう)を置き、地方の寺にはそれぞれ三綱(ごう)(上座(じょうざ)、寺主(じしゅ)、都維那(ついな))を置いて僧尼を取り締まった。有能な僧を僧官に任命して僧尼を統括させることは、すでに中国にある。北魏(ほくぎ)の時代(397)に法果を沙門統(しゃもんとう)に任じた。後秦(こうしん)の時代(405)には僧(そうりゃく)が僧正に任ぜられ、僧遷が悦衆(えつしゅ)、法欽らが僧録(そうろく)に任ぜられたという。彼らは国家から費用が給せられ、この制度が日本に移入せられて僧綱の制度となった。

 奈良・平安時代には僧綱の権威は強大で、僧尼の非行を取り締まり、出家還俗(げんぞく)の事務を行い、教団行政に君臨した。出家のとき僧綱より度牒(どちょう)(得度を公認する文書)が与えられ、在家の籍を抜き、人頭税が免ぜられた。最澄(さいちょう)が比叡山(ひえいざん)に大乗戒壇をつくらんとした目的の一つは、僧綱の支配を脱せんためであった。しかしのちには、僧官は名誉職となり、皇室や貴族出身の僧が高位の僧官に任ぜられるようになった。僧正は僧官の最高位であり、その下に僧都があり、僧尼を統括した。中国では6世紀に慧光(えこう)が僧都に任ぜられたのが初めで、日本では624年に鞍部徳積(くらつくりのとくしゃく)が任ぜられたのが最初であるという。僧録も僧官の1種であり、後秦代に初めて置かれたが、僧尼の名籍などを記録し、僧の人事をつかさどった。わが国では室町時代にこの僧官が置かれ、相国(しょうこく)寺の春屋妙葩(しゅんおくみょうは)が僧録に任ぜられ、京都禅宗寺院の五山十刹(じっせつ)の人事をつかさどり、あわせて幕府の政治外交等の文書をも作成した。この事務所を僧録司という。

平川 彰]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「僧官」の意味・わかりやすい解説

僧官 (そうかん)

政府から任命されて,教団を統率し宗教業務をつかさどる僧をいう。中国においては,北魏の道武帝が皇始年間(396-397)に法果を道人統に任じたのが,もっとも早い記録であり,後秦でも405年ごろに僧主,悦衆,僧録を置いた。僧官の名称は時代によってさまざまであったが,おおむね南北朝時代には,北朝は道人統の系統をひく沙門統,昭玄統を長官とし,南朝では後秦の制をついで僧正の名称が用いられた。この時代の僧官には,僧尼の裁判を仏教の戒律に従って行うなど,ある程度の自由性が認められていたが,唐代になると俗官が統制にあたり,中央僧官すら久しく置かれなかった。中唐には,中央に俗官の功徳使の下に左右両街僧録,地方に僧正,僧統等が置かれ,宋代に継承されたが,度牒(出家得度者であることの証明書)の発給などの業務は行政官がつかさどった。

 明初に整った僧官制度が施行され,それによってますます国家の教団規制が強くなった。
執筆者: 新羅では,6世紀中ごろ真興王のとき国統・大都維那・大書省を置き,政官と称した。日本では624年(推古32)百済の僧観勒(かんろく)の奏上によって僧正,僧都を任じたのが始まりである。その後,645年(大化1)十師(じつし)に改まったが,律令制の施行にともない683年(天武12)僧正,僧都,律師からなる僧綱(そうごう)が成立した。これは中央の僧官であるが,701年(大宝1)諸国に国師が任ぜられ,地方の仏教界の統制にあたった。僧綱の構成員は,時代の経過とともに大僧正,僧正,大僧都,少僧都,律師に分かれ,国師は平安初期に講師(こうじ),読師に改称された。
僧綱
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「僧官」の意味・わかりやすい解説

僧官【そうかん】

朝廷が僧に与えた官職。日本では中国の僧官を見習って,624年に僧正・僧都・法頭(ほうず)の3官を置いたことに始まる。のち684年に僧正僧都・律師からなる僧綱(そうごう)を置いて,全国の僧尼を統轄し,法務を統べる。→僧位

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「僧官」の意味・わかりやすい解説

僧官
そうかん

中国仏教における僧尼を統轄し,教法の維持を任務とする官職。東晋の安帝 (在位 396~417) の時代に始り,沙門統,僧統,僧正,僧主などが設けられた。日本でもこれにならって仏教の役職として僧綱がおかれた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android