全反射(読み)ゼンハンシャ(その他表記)total reflection

デジタル大辞泉 「全反射」の意味・読み・例文・類語

ぜん‐はんしゃ【全反射】

光が、屈折率の大きな物質から屈折率の小さな物質に入射するとき、入射角がある一定角度より大きいと、境界面で全部反射される現象

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精選版 日本国語大辞典 「全反射」の意味・読み・例文・類語

ぜん‐はんしゃ【全反射】

  1. 〘 名詞 〙 光が屈折率の大きい物質から、小さい物質に向かって進むとき、それらの境界面で、入射角がある角度より大きいと、境界面で反射する現象。
    1. [初出の実例]「そればかりではない。全反射がある。日陰は日表(ひなた)との対照で闇のやうになってしまふ」(出典:冬の蠅(1928)〈梶井基次郎〉一)

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改訂新版 世界大百科事典 「全反射」の意味・わかりやすい解説

全反射 (ぜんはんしゃ)
total reflection

屈折率の大きい媒質から小さな媒質へ向かって光が入射するとき,屈折角は入射角より大きく,ある入射角では屈折角が90度となる。このときの入射角を臨界角というが,入射角が臨界角を超えると,光は全部反射される。この現象を全反射という。水(屈折率1.33)から空気中へ出る光の臨界角は48度30分であり,ガラス(屈折率1.52)から空気の場合は41度10分。

 金属鏡などで99%以上の安定な反射率を得るのは困難であるが,全反射はその反射率が100%で永続的である。二等辺直角三角形のガラス製プリズムで,等辺の一方側面に垂直に光を入射させれば,底面に対しての入射角がガラスと空気の組合せの臨界角を超え,光は全反射される。全反射された光は残りの等辺の側面を垂直に射出する。このようなプリズムを全反射プリズムという。双眼鏡には像の倒立を直す全反射プリズムの一種ポロプリズムが用いられる(図)。また,全反射の際に,入射角と偏光方向とによって,光の互いに垂直な方向に振動している2成分の位相が変わることを利用したフレネルの斜方体(フレネルロム)は円偏光を作るために用いられる。

 全反射をしている面の外側,すなわち屈折率の小さい媒質中には光がしみ出し,境界面に沿って伝わる。これをエバネッセント波という。この面の外側に光の波長程度の間隔を置いて屈折率の高い媒質を再び置けば,エバネッセント波を介して光は透過し,境界面での反射は全反射でなくなる。
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百科事典マイペディア 「全反射」の意味・わかりやすい解説

全反射【ぜんはんしゃ】

屈折率の大きい媒質1(屈折率:n1)から屈折率の小さい媒質2(屈折率:n2)へ向かって光線が入射したとき,光線が境界面で屈折を起こさず全部反射される現象。入射角iがsin i(/0)=n2/n1で決まる角i(/0)より大きいと起こる。i(/0)を臨界角といい,光線がガラスから空気に向かうときは41°10′。全反射では光の全量が反射され,吸収が起こらず鏡の反射率よりすぐれているので各種の光学器械に利用。→反射の法則全反射プリズム
→関連項目屈折計

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「全反射」の意味・わかりやすい解説

全反射
ぜんはんしゃ
total reflection

光が光学的に密な媒質(屈折率の大きな物質)から疎な媒質(屈折率の小さな物質)へ入射するとき,入射角がある特定の角(→臨界角)以上のときは,その境界面で全部の光が反射してしまい,屈折光線は存在しなくなる。これを全反射という。光ファイバを使った光ファイバ通信では,ファイバ内で全反射を繰り返しながら伝送が行なわれる。

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世界大百科事典(旧版)内の全反射の言及

【反射】より

…またn2n1のとき,sinφ1n2/n1となる入射角以上ではRPRsも1となる。このような場合を全反射といい,入射した光はすべて反射される。 屈折率nGの媒質による反射を防止しようとする場合,なる屈折率の膜でその表面を覆えば,膜の厚さをdとして,nd=λ/4となる波長λの光に対して反射は0となる。…

【光】より

…第1媒質中の光の速さが第2媒質中に比べて遅い,すなわちn21<1のとき,入射角θIがsinθIn21を満たす臨界角を超えると,入射光はすべて反射されるようになる。これを全反射という。異方性のある媒質の屈折率は,その中を伝わる光の電場の方向に依存し,一定入射角の入射光も,その偏光方向によって屈折角が異なり,一般には屈折して二つの光線に分かれる。…

※「全反射」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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